夢かよふ道さへ絶えぬ呉竹の‥‥

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−今日の独言− 記録破りの大雪と証人喚問と東アジアサミットと

 このところ近年にない厳しい冷え込みがつづく。近畿でも日本海側では大雪が降りつづき、明日にかけて記録破りになりそうな。今日はお馴染み赤穂浪士の吉良邸討入りの日だが、歌舞伎でも映画でも討入りに大雪は切っても切れない定番の付け合せだ。
ところで、国会ではマンションなどの耐震強度偽装問題で証人喚問が行なわれている。問題の姉歯一級建築士木村建設の木村と篠塚氏、総建の内河氏が順次登場する。
一方、マレーシアのクアラルンプールではASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3(日中韓)首脳会談につづいて、今日は第1回東アジアサミットが開かれ、小泉首相も12日からお出ましだ。
いま国内で最大の注目を集めている偽装問題の証人喚問を、東アジアサミットの日程にぶつけるあたり、対中・韓の小泉外交がクローズアップされるのを避ける深謀遠慮が働いているのではないか、とどうしても勘繰りたくなるのだが‥‥。
 記録破りの大雪と証人喚問と東アジアサミットと、2005(平成17)年の歳末の一日、この三件の取り合わせは、なお明日の見えない冬の時代に逼塞している我が国の状況をよく象徴しているのかもしれない。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<冬−9>
 閨(ねや)のうへは積れる雪に音もせでよこぎる霰窓たたくなり  京極為兼

玉葉集、冬の歌の中に。建長6年(1254)−元弘2年(1332)。藤原定家の曾孫、京極為教の庶子。祖父為家・阿仏尼に歌道を学ぶ。御子左家京極派和歌の創始者にして主導者。同じ御子左家二条為世とは激しい論戦を展開したライバル。伏見院の信任を得て、玉葉集単独の選者となる。
邦雄曰く、窓にあたってさっと降り過ぎてゆく霰、下句はその一瞬を見事に言い得ている。一方屋の上は積った雪が受け音はまったく聞こえない。音がしたとて、微かな儚い響きではあろうが。二条派歌人は「よこぎる」とは言わずとも「たたく」で十分と難じたが、言語感覚の差であろう、と。


 夢かよふ道さへ絶えぬ呉竹の伏見の里の雪の下折れ  藤原有家

新古今集、摂政太政大臣家にて、所の名を取りて、冬歌。久寿2年(1155)−建保4年(1216)。六条藤原重家の子。定家と同時代人にて、後鳥羽院歌壇の主要歌人の一人。和歌所寄人となり定家・家隆らととみに新古今集の選者。
第三句「呉竹の」は竹の節に懸けた「伏見」の枕詞。
邦雄曰く、伏見の里の雪景色が絵のように展開される一方、心の世界では愛し合う二人の、男の切ない夢は、その呉竹即ち淡竹の、雪の重みに耐えきれず折れる鋭い響きに破られ、せめてもの夢路の逢瀬すらも中断される。紗幕ごしに聴く弦楽曲にも似た、微妙細緻な調べ、言葉の綾は、有家一代の傑作、と。


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