2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

預けたるみそとりにやる向河岸

山水思想―「負」の想像力 (ちくま学芸文庫)作者: 松岡正剛出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/04/09メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 17回この商品を含むブログ (19件) を見る―表象の森― 雪舟から等伯へ<A thinking reed> 松岡正剛「山水思想」−「負…

ことしは雨のふらぬ六月

―世間虚仮― 度肝を抜く‥図朝刊の何面だったか、眼に飛びこんできた一枚の写真に、唖然としつつも思わず見入ってしまった。「身動きできない‥猛暑の四川」と、写真の大きさに比べれば控え目に小さな見出しがついていた。猛暑になった中国・四川省遂寧で27日、…

奈良がよひおなじつらなる細基手

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「梅が香の巻」−09 娘を堅う人にあはせぬ 奈良がよひおなじつらなる細基手 野坡細基手-ほそもとで-次男曰く、会わせぬと云うならよけい会いたい、見せたがらぬものなら見たい、とつけこんでいる。細基…

あかり消すやこゝろにひたと雨の音

―山頭火の一句―句は大正11年の秋。大正8年の秋からほぼ4年の東京暮しに終止符を打たざるをえなくなったのは、同12年9月1日、あの関東大震災の受難である。震度7.9の大地震が起こったのは、ちょうど昼時を迎える午前11時58分。東京では地震発生とほぼ時を同…

娘を堅う人にあはせぬ

―表象の森― 「夢の中での日常」と「パラ・イメージ論」-承前-「言葉全体が夢とか入眠とかとおなじ状態のところで使われている、まれな超現実的な作品」として昭和23年2月に発表された短編「夢の中での日常」は、文庫にして僅か30頁という掌篇だが、「フロイ…

御頭へ菊もらはるゝめいわくさ

―表象の森― 「夢の中での日常」と「パラ・イメージ論」島尾敏雄の短編「夢の中での日常」、この超現実的としかいいえないような作品世界を、吉本隆明は「ハイ・イメージ論?」のなかで「パラ・イメージ論」なる一章を設けて、図形論的に解読してみせている。…

炎天せまるわれとわが影を踏み

−山頭火の一句−句は大正7年「層雲」所収の「汗」11句の一。一ツ橋図書館に勤務するようになってやっと小康を得た山頭火の暮し向きであったが、大正11年夏頃から彼は原因不明の不調に陥っている。頭が重く、ときに頭痛、不眠が続いた。医者の診断によれば強度…

藪越はなすあきのさびしき

―世間虚仮― 暑中お見舞本ブログお訪ねの皆様へ暑中お見舞い申し上げます。 大暑の候なれば、何にもましてご自愛のほどを。年を経るごとに、都会の夏がいよいよ身に堪えるようになってきました。 かといって家族挙げて何処かへ遁走するわけにもゆかず、またそ…

宵の内はらはらとせし月の雲

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「梅が香の巻」−05 上のたよりにあがる米の直 宵の内はらはらとせし月の雲 芭蕉次男曰く、初折ノ表五句目、最初の月の定座である。 月は兼三秋の季語だが、無月-八月十五夜の曇り月-という季語がある以…

上のたよりにあがる米の直

―世間虚仮― 厄日‥?今日から大暑、その名に恥じず、暑い、暑い、とにかく暑い。子どもにとってはなにもかも初めて尽しの夏休み。 今日から始まる朝のラジオ体操に出かけてみたが、広いグランドにパラパラと5.60名程度か。 朝のこの時間帯はさすがにまだ過ご…

家普請を春のてすきにとり付て

―世間虚仮― 世界に冠たるクマゼミ大阪のクマゼミは、世界で一番煩い、のだそうな。 最盛期には長居公園で93.8dbを記録したというその音量のほどは、騒々しい工場内を上回るほどといわれるから凄まじい。「大阪のクマゼミの発生-予測と実況-」というsiteがあ…

処々に雉子の啼きたつ

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「梅が香の巻」−02 むめがゝにのつと日の出る山路かな 処々に雉子の啼きたつ 野坡処々-ところどころ-に次男曰く、景気を付添えた脇である。景気は景曲とも云い、広義にはいわゆる景色のことだが、鎌倉…

電車終点ほつかりとした月ありし

ムンク伝作者: スー・プリドー,木下哲夫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2007/08/11メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (5件) を見る―山頭火の一句― 句は先と同じ「層雲」大正9(1920)年1月号所収皮肉なめぐりあわせというか、サキノと…

むめがゝにのつと日の出る山路かな

―表象の森― 歌仙「炭俵」「炭俵」は野坡-やば-が主撰者となり、弧屋-こおく-と利牛-りぎゅう-が扶助。三人とも呉服・両替商越後屋-三越・三井の前身-江戸店-日本橋駿河町-の手代である。 元禄6(1693)年にはじまり、7年6月28日奥付板。諸家四季発句256句、歌…

悲しみ澄みて煙まつすぐに昇る

―山頭火の一句―先句と同様「層雲」大正9年1月号所収。山頭火は疲れていた、肉体ばかりではなく神経もまた‥。大正9年のいつ頃か、妻サキノの実家から、彼の下宿に一通の手紙が届いた。 サキノの実兄からのもので、内容は、彼の不行跡を厳しく咎める文面。さら…

赤きポストに都会の埃風吹けり

―山頭火の一句―句は「層雲」大正9年1月号に発表、句作は8年の秋か初冬だろう。山頭火は、大正8年10月、妻子を熊本に残したまま、何を求めてか、突然の上京をしている。 早稲田に近い下宿屋の2階に住む、13歳も年少の句友茂森惟士を頼りに、その隣の四畳半に…

枇杷の古葉に木芽もえたつ

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−36 一構鞦つくる窓のはな 枇杷の古葉に木芽もえたつ 史邦古葉-ふるは-、木芽-このめ-次男曰く、「花」ともなれば末にも賞翫の趣向がある、と凡兆が作れば、不易も流行してこそ不易にな…

一構鞦つくる窓のはな

―世間虚仮― ハマスイ、まだムリ?今春、新一年生となった幼な児の夏休みもこの週末からはじまる。入学まもなくの頃、喘息とアトピーを併発させてなにかと心配やら厄介をかけてくれたものの、近頃は学校生活にも慣れ、体調も比較的安定しているのだが、さて長…

たゝらの雲のまだ赤き空

−表象の森− みにくいアヒルの子「ありさ」という女の子、中学1年生になったばかりだから、まだ13歳か。母親の勧めるままに3歳からクラシックバレエを始めたが、物心ついた頃にはすでに踊ることに夢中になっていた。いつのまにか、バレエ教室の先生からは、金…

押合て寝ては又立つかりまくら

―世間虚仮― 13回忌の法要に今朝、このあたりでは蝉が鳴きはじめた。 梅雨明けも近い、愈々本格的な夏の到来、七十二候なら蓮始華。 宇治の御三室戸寺は、ツツジやあじさい寺として名高いが、蓮の寺でもよく知られ、もう次々と花を咲かせているそうな。今日は…

ぬのこ着習ふ風の夕ぐれ

―世間虚仮― 一科学者の死とノーベル賞ニュートリノ振動-素粒子のニュートリノに質量があることを立証-の発見をしたことで知られる物理学者戸塚洋二氏死去の報に、ノーベル賞の有力候補と目され期待が集まっていただけに、その死を惜しむ声は大きく、各紙とも…

柴の戸や蕎麦ぬすまれて歌をよむ

―表象の森− 無償の秩序<A thinking reed> S.カウフマン「自己組織化と進化の論理」より2.生命の起源 単純な確率論からいえば生命の誕生はありえなかった- 生命の理論‥‥。 ・細菌の生じた原因は空気それ自身にある−ルイ・パストゥール・原子スープ−大気中…

山の青さをまともにみんな黙りたり

―山頭火の一句― 大正7年、夏の句であろう。 この年の6月、弟二郎が自殺した、縊死である。その遺書に 「内容に愚かなる不倖児は玖珂郡愛宕村-現岩国市-の山中に於て自殺す。 天は最早吾を助けず人亦吾輩を憐れまず。此れ皆身の足らざる所至らざる罪ならむ。…

湖水の秋の比良のはつ霜

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−30 青天に有明月の朝ぼらけ 湖水の秋の比良のはつ霜 芭蕉次男曰く、時分に景の付である。比良山と云えば、古来、寄合の詞は雪・月・花それに山風と相場が決まっている。比良の初霜を詠…

青天に有明月の朝ぼらけ

浮浪雲 (1) (ビッグコミックス)作者: ジョージ秋山出版社/メーカー: 小学館発売日: 1975/06/06メディア: コミック購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (10件) を見る―世間虚仮― 池田久美子と小沢一郎洞爺湖サミットで喧しい世間-マスコミ-だが、そ…

おもひ切たる死ぐるひ見よ

―四方のたより― 船阪義一氏の急死に‥船阪義一氏急死の報をひょんなことから知ったのはちょうど1週間前。驚き、騒ぎ立つ心を抑えつけ、たしかな情報を待つも、杳として掴めぬままに日が過ぎてきたが‥、 ようやくにして判ってきたことは、心臓動脈瘤破裂で緊急…

せはしげに櫛でかしらをかきちらし

―表象の森― 鉄工所のなかの木造りの館-MULASIA大阪市の西区、九条界隈は、嘗て小さな鉄工所が集積、軒先を並べる街であったが、いまはもうその数、往時の半分いや1/3にも減少したであろうか。現在、阪神西九条駅と近鉄難波を結ぶ阪神電車西大阪線の延伸工事…

いまや別の刀さし出す

―四方のたより― 山崎旭萃三回忌追善の琵琶の会琵琶界で唯一の人間国宝だった山崎旭萃嫗が逝かれたのが06年の6月5日、1906(M39)年の生れだったからちょうど100歳の大往生であった。その三回忌追善と銘打って「筑前琵琶橘会全国演奏大会」が、明後日-7/6-の日…

暑さきはまる土に喰ひいるわが影ぞ

―山頭火の一句―大正6(1917)年夏の作か。この頃、当時五高の学生であった工藤好美-英文学者-と知り合い、歌誌「極光」の短歌会に誘われ出るようになっている。この短歌会には木村緑平の従弟にあたる古賀某もおり、彼は偶々大牟田から訪ねてきた緑平を山頭火に…

うき人を枳殻垣よりくゞらせん

―世間虚仮― イラク油田外資参入と豪鉄鉱石96.5%値上げ・72年にサダム・フセインが国有化して以来、排除されてきた外資メジャーによる油田開発がとうとう規制解除されるという。イラク戦争からすでに5年、国内の産油量は戦争前の日量250万バレルにまでほぼ回…