2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

おほかたの憂き身は時もわかねども‥‥

−表象の森− 秋色と東雲の空 裏門に秋の色あり山畠 支考 日中の相変わらずの暑気はともかく、朝夕はめっきり秋めいてきた。 身にしむやほろりとさめし庭の風 犀星 朝まだき頃、まだ寝ぼけた身体に秋の風が目を覚ましてくれる。 自転車をこぎだせば身も心も一…

秋吹くはいかなる色の風なれば‥‥

−表象の森− 似非箴言 再会とは、ただ再びまみえるにあらず その隠れたる、未だ知らざる處を 互いに見出さむとするならば 畢竟、新しき出会いとなるべし。 遠きも近きもなく 知友、朋輩はいうにおよばず 家族といわず、夫婦といわず 吐く息、吸う息の如く 時…

更けぬなり星合の空に月は入りて‥‥

−表象の森− 乾坤一擲の失敗作? 「新リア王」 嘗て旅した下北半島、真夏にもかかわらず、どんよりと曇った鈍い灰色の空の下、もう夕刻に近かったせいか訪れる人もなく、ただここかしこに硫酸ガスを燻らせたさいはての異形の地、恐山の荒涼とした風景も忘れ難…

琴の音に嶺の松風かよふらし‥‥

−表象の森− 不壊なるもの 以下は、F.カフカの「夢・アフォリズム・詩」(平凡社ライブラリー)からの引用。 人間は、 自分のなかにあるなにか<不壊(フエ)なるもの>、 破壊できないものへの永続的な信頼なくしては生きることができない。 その際、不壊なるも…

はるかなる唐土までも行くものは‥‥

−表象の森− 子守の神 円空が詠んだという歌一首。 これや此くされるうききとりあげて子守の神と我はなすなり 「うきき」は「浮き木」、 打ち棄てられた流木の腐れ木のごとき材に、 鑿や鉈をふるい数知れぬ仏を彫りつづけたわけだが、 「子守の神」というのが…

満潮の流れ干る間を逢ひがたみ‥‥

−表象の森− 円空の音楽寺と鉈薬師を訪ねて 一昨日(8/21)のことだが、円空仏の12神将探訪とばかり名古屋方面に出かけた。 当初、車で行くつもりだったが、ブログで知り合った名古屋在住のT君が案内役を買ってくれるというので、お言葉に甘えて彼の車で移動…

今人の心を三輪の山にてぞ‥‥

−表象の森− 夏の汗と不易流行 やはり、夏の汗は甲子園の高校野球がよく似合う。 早実と駒大苫小牧による決勝戦は、延長15回にても決着つかず、再試合となって勝負は明日へと持ち越された。 決勝戦の延長引分けによる再試合は、青森・三沢高校の太田幸司が悲…

蓬生の末葉の露の消えかへり‥‥

−表象の森− それでも帰りたい 「それでも帰りたい」、昨日付、毎日新聞の一面見出し。 20年を越えてつづいたスーダン南北内戦による破壊は、約400万人の家を奪ったという。記事はケニア北部のカクマキャンプに暮らす9万余の難民たちの実態を伝える。 昨年1月…

あきづ羽の袖振る妹を‥‥

−表象の森− ともすれば地獄のほのを 花を愛し月を愛する、やゝもすれば輪廻の業、 ほとけをおもひ経をおもふ、ともすれば地獄のほのを‥‥ 「一遍聖絵」の冒頭には、長い果てしのない遊行の旅へと、伊予の国を出立する際の姿が描かれているが、旅立つ一行は5名…

思ふことみな盡きねとて‥‥

−表象の森− 円空の十二神像円空の十二神像は四様の彫像群が残されている。 一は、愛知県扶桑町の正覚寺、 −正覚寺の12神将−二は、愛知県江南市の音楽寺、 円空がこの寺に立寄り逗留したのは延宝4(1676)年とされるから45歳である。 −音楽寺の12神将−三に、名…

宿は荒れぬうはの空にて影絶えし‥‥

−表象の森− 終戦と靖国と玉音と。 8.15、終戦記念日である。 9月に任期満了を控えた小泉首相は、念願だった?靖国神社への8.15参拝を、どうやら初志貫徹とばかり強行するらしい。先頃マスコミを賑わした、靖国へのA級戦犯合祀問題に触れた昭和天皇の発言、い…

手にならす夏の扇と思へども‥‥

−表象の森− 金子光晴の関東大震災詩篇 金子光晴の初期詩篇に「東京哀傷詩篇」と名づけられた、大正12(1923)年9月1日の、関東大震災に遭ったときに綴った詩群がある。明治28(1895)年生れの金子光晴はこの年28歳。被災の後、西宮市に住む実妹の嫁ぎ先、河野密…

松風の音のみならず石走る‥‥

−表象の森− 一茶の句鑑賞 手に取れば歩きたくなる扇かな文化15(1818)年、56歳の作。なにげなく手にした扇、その扇によって、思わず埋もれていた心の襞が掴みだされたというような感じがある。ふとなにかに向かって心が動いた、ふと歩きたくなったのである。…

端ゐつつむすぶ雫のさざなみに‥‥

−表象の森− 今月の本たち岩波文庫版の「金子光晴詩集」は清岡卓行によるアンソロジィだからたのしみ。 その清岡卓行は、去る6月3日鬼籍の人となった。1922年の生れだから83歳。 詩人だが小説もものした。中国大連に生れ、戦後までの20数年間を大陸に過ごした…

木をめぐりねぐらにさわぐ夕烏‥‥

番外 <YahooBB光のトラブル> またもネットがつながらないトラブル、BBフォンだから電話も。 YahooBB光マンション(VDSL)は、なぜこうもトラブルが起きる? 昨日は朝の6:00頃から夕刻6:30頃までの12時間余り。 復旧してYahooBBサイトの障害情報を見れば、以…

夏の池に寄るべさだめぬ浮草の‥‥

−表象の森− 「北斎漫画」を観る、読む反骨と奔放、貪欲な好奇心と枯れることなき創作意欲を燃やし続けた北斎。 90年に至る生涯のいまわの際になお、「あと十年、いや五年生かしてくれたら、ほんとうの絵描きになれるのに‥‥」と洩らしたという北斎。 昨年の9…

夕立の雲もとまらぬ夏の日の‥‥

−表象の森− 大沼の浮島伝説山形県のほぼ中央、最上川中流域に位置する朝日町には、浮島伝説、小さな島々がポカリポカリと湖面に浮き動いているという、不思議な島々があるらしい。大沼浮島稲荷神社の浮島だ。 私は嘗て3度ばかり東北を訪れたことがあるが、当…

暑き日の影よわる山に蝉ぞ鳴く‥‥

−表象の森− 田中康夫3選ならず立秋というのに台風の接近で天候は荒れ模様、明日未明にも紀伊半島から東海方面にかけて上陸かとみられている。 おまけに南方洋上には、8号、9号も北上中だが、こちらは列島本土を直撃することはなさそうで一安心。それにしても…

をりはへて音に鳴きくらす蝉の羽の‥‥

−表象の森− 突出する大阪の「野球留学」夏の高校野球が甲子園で始まった。 初日第3試合、横浜と大阪桐蔭の強豪激突は桐蔭が制した。 ところで、大会前日の5日、高野連が発表したという野球留学=他府県流出組の実態調査について各紙が報道しているが、他県を…

月も日もいかに行きけむかきくれし‥‥

−表象の森− 盆踊りの夏昨夜はいち早く盆踊りの音が聞こえてきた。 この界隈では毎年先陣を切って、中加賀屋のグランドで行われている民商主催のもので、たしか今夜と二晩つづくはず。 音頭取りのゲストなどに華やかさはないが、そこは民商さんのこと、出店の…

天の川八十瀬も知らぬ五月雨に‥‥

−表象の森− 朝湯所望 まこと60過ぎての手習いのほどは身に堪えるもの。 このところうちつづく体力消耗の日々に、疲労快復、気分一新と、朝風呂を所望。 下駄をつっかけ、チャリンコを駆って、幼な児を保育園に送り届けては、 そのまま、近頃、近所に見かけた…

はかなしや荒れたる宿のうたた寝に‥‥

−表象の森− いごっそうの美学「志」を白川静の常用字解で解説するところを引けば、 形声。音符は「士」、字の上部の「士」はもと「之」の形である。「之」は行くの意味であるから、心がある方向をめざして行くことを「志」といい、「こころざす(心がある方向…

これもやと人里遠き片山に‥‥

−表象の森− 美のチチェローネ八朔、 旧暦ならば新しく実った稲の取り入れの日であり、互いに贈答しあったりの祝い日だが、現在の盆時の贈答習慣である中元とは伝が異なるようだ。すでに返却期日がきていたヤーコブ・ブルクハルトの「美のチチェローネ」(青土…