2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

捨し子は柴苅長にのびつらん

―表象の森― 前向きか、後ろ向きか3月も末日、先日卒園式を迎えたK女は、保育園のこととてその後も連日通い、自転車で送り迎えをしてきたのだが、それも今日で最後、長年お世話になった保母さんたちや一緒に遊んできた仲間たちとお別れの日だ。 「何時に、お…

庄屋のまつをよみて送りぬ

―表象の森― 生命の非平衡性、創発性 寒の戻りか、思いのほか冷え込んだ朝。車を検査受けに出しているため、地下鉄で稽古へと出かける。 外へ出たらポツリポツリとしのつく雨、傘を持たずに飛び出したのを悔やんでみたがもう遅い。ままよ長くは降るまいと高を…

おかざきや矢矧の橋のながきかな

―世間虚仮― A.ネグリの来日中止この20日には来日して、昨日は京都大学で、今日29日は東京大学でのシンポジウムや東京芸大で歓迎イベントなどが催される筈だった「帝国」や「マルチチュード」の著者A.ネグリ氏らの来日が、外務省と法務省入国管理局の演じたド…

真昼の馬のねぶたがほ也

―表象の森― 自然淘汰と自己組織化このところの陽気で桜前線は一気に北上しているそうな。 昨日、一昨日と、K女の通うピアノ教室の送り迎えに自転車を走らせたが、ちらほらと開花した桜木が不意に眼に飛び込んできては、もうそんな時期かとちょっぴり面喰らっ…

うれしげに囀る雲雀ちりちりと

―世間虚仮― 道路特別財源から省職員の人件費今日の朝刊、 道路特定財源の一般化をめぐって紛糾、国会は膠着状態のまま、いよいよガソリン税など暫定税率の期限切れを迎えそうだが、そんな渦中に、問題の財源を原資とする道路特会-道路整備特別会計-から関係…

五形菫の畠六反

―表象の森― 金子光晴の未発表詩集太平洋戦争末期、金子光晴が妻の森三千代と息子の乾とともに疎開し、山梨県の山中湖畔で暮らしていた1944(S19)年12月からの1年数ヶ月の間に、親子三人でたがいに綴った私家版の詩集が、昨年の夏、東京の古書市で発見され、こ…

県ふるはな見次郎と仰がれて

―世間虚仮― 凝り型の卒園式生後6ヶ月から丸6年ものあいだ毎日通い続けた保育園の、今日はハレの卒園式だった。 この日をともに迎えた同級の園児たちは39名、定員120名で0歳児から年長組の5歳児までが洩れなく通うこの園で39名というのは、例年になく多い園児…

仏喰たる魚解きけり

写真は富嶽三十六景、藍摺10葉の内「信州諏訪湖」―表象の森― 富嶽三十六景北斎の富嶽三十六景が46葉もの景から成っていたとは、その一葉々々を順繰りに眺め渡してみるまで気がつかなかった。 勿論、当初は板元もその名の通り36葉の景で終結とする予定だった…

まがきまで津浪の水にくづれ行

―表象の森― 「歓喜する円空」ならぬ、歓喜する梅原猛か否応もない呪縛からやっと解放され自由な時間が取り戻せた。 この間に図書館からの借本の返済期限を気づかずにやり過ごしてしまったのが一冊、慌てて返しに走る始末。 読みかけたままに打棄った本が2冊…

命婦の君より来なんどこす

―表象の森― 定説を覆すlesser blain別冊日経サイエンス「感覚と錯覚のミステリー -五感はなぜだまされる-」のなかの「小脳の知られざる役割」-J.M.バウアー/L.M.パーソンズ-の小論はかなり関心を惹くものだった。 「little」の二重比較級「lesser」-より劣…

しのぶまのわざとて雛を作り居る

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「霽の巻」−13 紅花買みちにほとゝぎすきく しのぶまのわざとて雛を作り居る 野水次男曰く、ほととぎすは夜更・早暁に鳴き渡ることの方が多いから、古来、都では待侘びて聞くのを習とした鳥である。里…

紅花買みちにほとゝぎすきく

−世間虚仮− 京と宮明午前0時を期して「大津京」駅が誕生する。 JRの湖西線「西大津」駅の改称で、考古学者や歴史家から、大津「宮」は確かに存在したけれど、条坊跡が見つかっておらず、律令制都市としては歴史的に存在しなかった大津「京」を冠し、街おこし…

朝月夜双六うちの旅ねして

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「霽の巻」−11 蕎麦さへ青し滋賀楽の坊 朝月夜双六うちの旅ねして 杜国朝月夜-あさづくよ-次男曰く、「つゆ萩の」以下秋三句、「燈籠ふたつになさけくらぶる」を雑の作りと読んでよい所以だが、それと…

蕎麦さへ青し滋賀楽の坊

―世間虚仮― 我慢の日々普段なら自由な時間に事欠かぬ身の上なのだが、例年のことながら此の月だけは忙しく、このところ寝不足の日々が続いて疲労困憊気味、頭も身体もいささか朦朧としている。 折角図書館から借りだした本たちも、横に積み置かれたまま手も…

つゆ萩のすまふ力を撰ばれず

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「霽の巻」−09 燈籠ふたつになさけくらぶる つゆ萩のすまふ力を撰ばれず 芭蕉次男曰く、「大和物語」には、「万葉集」巻九に見える妻争いの長歌-莵原処女ノ墓ヲ見ル歌-から脚色した話を載せる-第147段-…

燈籠ふたつになさけくらぶる

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「霽の巻」−08 らうたげに物よむ娘かしづきて 燈籠ふたつになさけくらぶる 杜国燈籠-とうろ-と読む 次男曰く、「かしづく」を男女の情に執成-とりな-して付けている。客観描写もしくは男の側の競いと読…

らうたげに物よむ娘かしづきて

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「霽の巻」−07 茶の湯者おしむ野べの蒲公英 らうたげに物よむ娘かしづきて 重五次男曰く、「らうたげ」は可憐な風情。「かしづく」は、慈しみ育てる、大切に世話をする。本来は保護者が被保護者に対し…

茶の湯者おしむ野べの蒲公英

―表象の森― ルーブルで人形浄瑠璃パリのルーブル美術館で、文楽の「曾根崎心中」が演じられた模様が伝えられていた。 このイベント、1858年の日仏修好通商条約に始まる日仏交流150周年を祝う記念行事の一つだとか、「天神森の段」を演じる人間国宝・吉田簑助…

馬糞掻あふぎに風の打かすみ

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「霽の巻」−05 北の御門をおしあけのはる 馬糞掻あふぎに風の打かすみ 荷兮馬糞-まぐぞ-掻-カク-あふぎ-扇-に風の打-ウチ-かすみ次男曰く、新年の行事と時候に続けて、天文の付を以てした春三句目であ…

北の御門をおしあけのはる

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「霽の巻」−04 歯朶の葉を初狩人の矢に負て 北の御門をおしあけのはる 芭蕉次男曰く、其場のあしらいである。 背に初春を背負うと読んだか、それとも歯朶の別名-裏白-に眼を付けたか、北門から初狩に出…

歯朶の葉を初狩人の矢に負て

―世間虚仮― 意外に愉しめた世界卓球TV中継中国・広州で行われていた世界卓球のTV中継を、女子準決勝と男子準決勝と、卓球の中継映像など滅多にお眼にかかるものではないからか、ついつい誘われて連日観てしまった。 狭い卓球台を囲んでの対戦模様は、映像と…

こほりふみ行水のいなづま

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「霽の巻」−02 つゝみかねて月とり落とす霽かな こほりふみ行水のいなづま 重五ふみ行-ゆく- 次男曰く、連俳には「月の氷」という冬の月の傍題がある。和歌で「月の氷に・の」「氷れる月を・の」「月ぞ…