2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

枯草ふんで女近づいてくる

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月22日の稿に 12月23日、曇、晴、熊本をそまよふてSの家で、仮寝の枕!けふも歩きまはつた、寝床、寝床、よき睡眠の前によき寝床がなければならない、歩いても歩いても探しても探しても寝床が見つからない、夕方、茂森さ…

つめたい眼ざめの虱を焼き殺す

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月22日の稿に 12月22日、曇、晴、曇、小雪、行程5里、本妙寺屋。一歩々々がルンペンの悲哀だつた、一念々々が生存の憂鬱だつた、熊本から川尻へ、川尻からまた熊本へ、逓信局から街はづれへ、街はづれから街中へ、そして…

道はでこぼこの明暗

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月21日の稿に 12月21日、晴后曇、行程5里、熊本市。昨夜、馬酔木居で教へられた貸家を見分すべく、10時、約束通り加藤社で雑誌を読みながら待つてゐたら、例のスタイルで元寛さんがやつてきた-馬酔木さんは遅れて逢へなか…

今夜の寝床を求むべくぬかるみ

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月20日の稿に 12月20日、雨、曇、晴、行程4里、本妙寺屋。雨に間違いない空模様である、気の強い按摩さん兼遊芸人さんは何のこだはりもなく早く起きて出ていつた、腰を痛めてゐる日本的鮮人は相変はらず唸つてゐる、−間も…

夕べの食へない顔があつまつてくる

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月19日の稿に 12月19日、晴、行程2里、川尻町、砥用屋。まつたく一文なしだ、それでもおちついたもので、ゆうゆうと西へ向ふ、3時間ばかり川尻町行乞、久しぶりの行乞だ、むしやくしやするけれど、宿銭と飯代とが出来るま…

あるけばあるけば木の葉ちるちる

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月18日の稿に 12月18日、雨、后、晴、行程不明、本妙寺屋。終日歩いた、ただ歩いた、雨の中を泥土の中を歩きつづけた、歩かずにはゐられないのだ、ぢつとしてゐては死ぬる外ないのだ。朝、逓信局を訪ねる、夜は元寛居を訪…

霧、煙、埃をつきぬける

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月17日の稿に 12月17日、霜、晴、行程6里、堕地獄、酔菩薩。朝、上山して和尚さんに挨拶する-昨夜、挨拶にあがつたけれど、お留守だつた-、和尚さんはまつたく老師だ、慈師だ、恩師だ。茅野村へ行つて見てまはる、和尚さ…

見すぎ世すぎの大地で踊る

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月16日の稿に 12月16日、晴、行程3里、熊本市、本妙寺屋堅いベンチの上で、うつらうつらしてゐるうちにやうやく朝が来た、飯屋で霜消し一杯、その元気で高橋へ寝床を探しにゆく、田村さんに頼んでおいて、ひきかへして寥…

磯に足跡つけてきて別れる

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月15日の稿に 12月15日、晴、行程2里、そして汽車、熊本市、彷徨。けふも大霜で上天気である、純な苦味生さんと連れ立つて荒尾海岸を散歩する-末光さんも純な青年だつた、きつと純な句の出来る人だ-、捨草を焚いて酒瓶を…

夕闇のうごめくは戻る馬だつた

Information – 四方館のWork Shop 四方館の身体表現 -Shihohkan’s Improvisation Dance- そのKeywordは、場面の創出。 場面の創出とは そこへとより来たったさまざまな表象群と そこよりさき起こり来る表象群と、を その瞬間一挙に まったく新たなる相貌のも…

水のんでこの憂鬱のやりどころなし

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月13日の稿に 12月13日、曇、行程4里、大牟田市、白川屋昨夜は子供が泣く、老爺がこづく、何や彼やうるさくて度々眼が覚めた、朝は早く起きたけれど、ゆつくりして9時出立、渡瀬行乞、三池町も少し行乞して、善光寺へ詣で…

日向の羅漢様どれも首がない

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月12日の稿に 12月12日、晴、行程6里、原町、常磐屋思はず朝寝して出立したのはもう9時過ぎだつた、途中少しばかり行乞する、そして第十七番の清水寺へ詣でる、九州西国の札所としては有数の場所だが、本堂は焼失して再興…

うらゝかな今日の米だけはある

Information – 四方館のWork Shop 四方館の身体表現 -Shihohkan’s Improvisation Dance- そのKeywordは、場面の創出。 場面の創出とは そこへとより来たったさまざまな表象群と そこよりさき起こり来る表象群と、を その瞬間一挙に まったく新たなる相貌のも…

行き暮れて水の音ある

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月10日の稿に 12月10日、晴、行程6里、善導寺、或る宿9時近くなつて、双之介さんに送られて、田主丸の方へ向ふ、別れてから、久しぶりに行乞を初めたが、とても出来ないので、すぐ止めて、第十九番の札所に参拝する、本堂…

みあかしゆらぐなむあみだぶつ

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月9日の稿に 12月9日、雨后曇、双之介居滞在-本郷上町今村氏方-よい一日だつた、勧められるままに滞在した、酒を飲んでものを考へて、さいどうしようもないが、どうしようもないままでよかつた、日記をつけたり、近所のお…

たゝへた水のさみしうない

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月8日の稿に 12月8日、晴后曇、行程4里、松崎、双之介居。8時頃、おもたい地下足袋でとぼとぼ歩きだした、酒壺洞君に教へられ勧められて双之介居を訪ねるつもりなのである、やうやく1時過ぎに、松崎といふ田舎街で「歯科…

ころがつてゐる石の一つは休み石

Information – 四方館のWork Shop四方館の身体表現 -Shihohkan’s Improvisation Dance- そのKeywordは、場面の創出。場面の創出とは そこへとより来たったさまざまな表象群と そこよりさき起こり来る表象群と、を その瞬間一挙に まったく新たなる相貌のもと…