2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

水音、なやましい女がをります

―四方のたより―<日暦詩句>-14 せめて死の時には、 あの女が私の上に胸を披いてくれるでせうか。 その時は白粉をつけてゐてはいや、 その時は白粉をつけてゐてはいや。ただ静かにその胸を披いて、 私の眼に副射してゐて下さい。 何にも考へてくれてはいや、…

旅のつかれの夕月がほつかり

―四方のたより―一昨日の午後、「SOULFUL DAYS」の一次発送を近くの郵便局に持ち込んだ。 昨日から、受領したとのメールやハガキなどいくつか寄せられている。 突然不躾にも重いものを送られてきた知友あるいは未知の人-生前のRYOUKOの友人など-、その何人か…

ほうたるこいほうたるこいふるさとにきた

―四方のたより―「SOULFUL DAYS」の印刷製本がやっとUP。 すぐさま引取りに走り、夕刻から半日、読み返していた。 昔からよく知った印刷屋のこととて、ずいぶんと安くしてくれている。 いや、ほんとうのところ、 印刷に出す段まですっかり失念していたのだが…

ふたゝび渡る関門は雨

―四方のたより―<日暦詩句>-11 ひげが生える ひげが生える男のあごに男の唇のまわりにひげが生え る夜明けと共にひげが生える見知らぬ植物の芽のよう にひげが生える女の柔い頬のためにひげが生えるサル バドルダリと共にひげが生えるいつしようけんめいひ …

山の家のラヂオこんがらがつたまゝ

―四方のたより―<日暦詩句>-10 ベルが鳴るいつでもベルが 星のない熱い肉のひだに柔らかな瞬きから生まれた一人の男が 遠くから咽喉がつらぬきにきた一挺のかんざしに つらぬかれたまま続けている会話の間中 ベルが鳴るいつでもベルが ―天澤退二郎「星生れ…

ボタ山へ月見草咲きつゞき

―世間虚仮― やっと捜査の手「人体の不思議展」にやっと捜査の手が伸びた。 もう10年近くにもわたって全国各地で興行的展示を開催し、リアルな人体標本で興味本位な耳目を集め、延べ600万人以上もの動員をしてきたという「人体の不思議展」については、私も嘗…

星がまたたく草に寝る

―四方のたより―<日暦詩句>-8 檸檬絞り終えんとしつつ、轟きてちかき戦前・遙けき戦後ポケツトにふくれつつ真逆様に吊らるるズボン甲虫の叛乱、つねに少年は支配者にして傍観者 ―岡井隆「少年行」より-昭和36年― ―山頭火の一句― 行乞記再び -141 5月28日、…

初夏の坊主頭で歩く

―四方のたより―<日暦詩句>-7 なんという駅を出発して来たのか もう誰もおぼえていない ただ いつも右側は真昼で 左側は真夜中なふしぎな国を 汽車は走りつづけている ―石原吉郎「葬式列車」より-昭和37年― ―山頭火の一句― 行乞記再び -140 5月27日、晴、行…

大楠の枝から枝へ青あらし

―四方のたより―<日暦詩句>-6 ぼくの漂流は どこまで漂流していくのであろう 退屈な楽器や 家財道具をのせて いまにも沈みそうではないか 畢竟 難破だけが確実な旅程の一つであろう ―村野四郎「春の漂流」より-昭和34年― ―山頭火の一句― 行乞記再び -139 5…

ふるさとはみかんのはなのにほふとき

―世間虚仮― 大阪7.7%、全国81.6%この圧倒的な数値の差はなにか、といえば中学校における完全給食実施率。 滋賀46.0%、京都61.7%、奈良69.2%、和歌山55.6%、兵庫50.7%と、総体に近畿府県での普及は低いが、それにしても大阪の低さは他を圧倒している。…

波音のお念仏がきこえる

―四方のたより―<日暦詩句>-4 野良犬・野良猫・古下駄どもの 入れかはり立ちかはる 夜の底 まひるの空から舞ひ降りて 襤褸は寝てゐる 夜の底 見れば見るほどひろがるやう ひらたくなつて地球を抱いてゐる ―山之口漠「襤褸は寝てゐる」より-昭和15年― ―山頭…

けふは霰にたゝかれてゐる

―四方のたより― 善意のパフオーマンス化<日暦詩句>-3 冬といふ壁にしづもる棕櫚の影 冬といふ日向に鶏の坐りけり落葉やんで鶏の眼に海うつるらし ―三好達治「落葉やんで」より-昭和5年― タイガーマスクの伊達直人を名告り、群馬県の児童相談所前にランドセ…

ふるさとの言葉のなかにすわる

―四方のたより― この冬一番<日暦詩句>-2 骨片は、飢えた海の光である。華やかな庭は鳥のやうに消え去つた。花を祝えば、橋は頬桁を歪めて一本の道を示す。花に膨れ上がつた一本の道は、墜ち凹み一本の道の中の一本の道となつて、安堵の霰を吐く。 ―――― ひ…

こんやの宿も燕を泊めてゐる

―四方のたより―<日暦詩句>-1 在らぬたましひの在らぬこゑ 在ることの怖れはもはやない 在らぬことは怖れではない 在らぬことの怖れは在らない すべての在ることの怖れは在らぬことへの予感であり すべての在らぬことは在ることの怖れからの解脱である ―那…

雲がない花の散らうとしてゐる

―日々余話― 佐賀と長崎を廻って暮れの28日から正月の1日まで、北九州の佐賀と長崎を周回する旅へ。 高校時代の修学旅行は此の地だった、以来まったく訪れたことはないから50年ぶりか。 鳥取に大雪が降って1000台からの車が立ち往生、雪中の越年と騒がれたよ…