2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

痩骨のまだ起直る力なき

―四方のたより― 水平的集合の祝祭空間、その楽日は?この24日から昨日-29-までの1週間行われた、CASOにおける「デカルコマニィ的展開/青空」展とはいったいなんであったか? 初めと終りの日だけにしか立ち会っていない私に、それを語る資格があるやなしやと…

ほとゝぎす皆鳴仕舞たり

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−22 火ともしに暮れば登る峯の寺 ほとゝぎす皆鳴仕舞たり 芭蕉皆-みな-鳴-なき-仕舞-しまひ-たり次男曰く、「たれぞの面影」を誘う狙いについて、当座、去来の口から出なかった筈はない…

壁書さらに「默」の字をませり松の内

―山頭火の一句―明治45-1912-年、30歳になる年の句だが、この頃の種田正一はまだ「山頭火」ではない。詳しく云えばすでに山頭火をペンネームにはしていたが、俳号は「田螺公」と称し、他の文芸活動、たとえばツルゲーネフの翻訳などに山頭火を使っていたらし…

火ともしに暮れば登る峯の寺

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−21 雪けにさむき嶋の北風 火ともしに暮れば登る峯の寺 去来暮-くる-れば次男曰く、二句一意に作った島の暮しである。 「雪けにさむき」とあれば、「火ともしに」と起す初五文字の遣い方…

雪けにさむき嶋の北風

写真は「Check Stone」-作品集「四季のいろ」より-―表象の森― 2年ぶりの「四季のいろ」午後から日本風景写真協会の第3回選抜展を観に、本町の富士フイルムフォトサロンに出かけた。大阪展は今日が最終日、来週は札幌展だそうである。「四季のいろ」と題され…

馬も召されておぢいさんおばあさん

―山頭火の一句―句集「銃後」所収、昭和12年の句だが、時季のほどは判らない。11月1日の日記には短く、「自己否定か。自己破壊か。自己忘却か」と。 山頭火はやっぱり落ち着けない。湯田温泉へ出かけて、またしても自分を見失ってしまった。2日から3、4、5と…

いちどきに二日の物も喰て置

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−19 ひとり直し今朝の腹だち いちどきに二日の物も喰て置 凡兆喰-くう-て置-おき-次男曰く、二ノ折-名残ノ折-入。手間が省ける、ということを付合のたねにしている。但し、前はいつ、誰…

ひつそりとして八つ手花咲く

―山頭火の一句―詞書に「戦死者の家」と添えられ、句集「銃後」所収、昭和12年の晩秋あるいは初冬の頃か。昭和12年と云えば、7月7日、満州で盧溝橋事件が勃発、北支事変へと戦線拡大の火ぶたが切って落とされた。山頭火は7月14日の日記に、 「北支の形勢はい…

ひとり直し今朝の腹だち

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−18 苔ながら花に竝ぶる手水鉢 ひとり直し今朝の腹だち 去来直-なおり-し次男曰く、「秘注」は「小庭ノ手入ニ打紛テ、世事ヲ忘レタル体ヲ附タリ。句ノ機嫌ヲ整タル附ナリ」と云い、露伴…

苔ながら花に竝ぶる手水鉢

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−17 さし木つきたる月の朧夜 苔ながら花に竝ぶる手水鉢 芭蕉竝-なら-ぶる次男曰く、「猿蓑」の三つの歌仙興行で、芭蕉は異例の脇をつとめている。これは、王城の地で正風を起すなら京連…

さし木つきたる月の朧夜

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−16 この春も盧同が男居なりにて さし木つきたる月の朧夜 凡兆次男曰く、年季奉公が根を生やすのは挿木しがつくようなものだ、と人情を景に執成している。むろん、言いたいことは、きみ…

この春も盧同が男居なりにて

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−14 三里あまりの道かゝへける この春も盧同が男居なりにて 史邦盧同-ロドウ-、正しくは盧仝次男曰く、客其人の帰路と解すれば三句が同一人物となるから、客の僕に執成して、主人の使い…

三里あまりの道かゝへける

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−13 吸物は先出来されしすいぜんじ 三里あまりの道かゝへける 去来次男曰く、ハスの花は日の出とともに開き、午後3時頃に閉じる。散る時は一度に花弁が落ちるわけではないが、午後、ほぼ…

風の明暗をたどる

―山頭火の一句―昭和10年師走の6日、 「旅に出た、どこへ、ゆきたい方へ、ゆけるところまで 旅人山頭火、死場所をさがしつつ私は行く! 逃避行の外の何物でもない」 こう日記に書きつけて、彼は其中庵をあとに飄然と旅立った。遡って、その年の8月に自殺未遂…

吸物は先出来されしすいぜんじ

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−12 芙蓉のはなのはらはらとちる 吸物は先出来されしすいぜんじ 芭蕉先-まず-出来-でか-されし次男曰く、供養に飲食-オンジキ-は付物と見込んだ付だが、見どころは、雑の作りを以て季の…

草ふかく水のあふるるよ月

―山頭火の一句―昭和12年初夏の頃か、「層雲」発表の句。この年の山頭火は其中庵にあって、読書に耽ることが多かったようである。道元の「正法眼蔵」を読む際などはかならず正座していたらしい。とはいえ、むろん近くの湯田温泉へは知人らとよく遊蕩にも出か…

芙蓉のはなのはらはらとちる

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−11 ほつれたる去年のねござのしたゝるく 芙蓉のはなのはらはらとちる 史邦次男曰く、「ほつれたる」とあれば「はらはらとちる」と応じ、彼が「去年のねござ」なら此は「芙蓉のはな」だ…

ここまでを来し水のんで去る

−山頭火の一句− 句の詞書に「平泉にて」とあり。 昭和11年6月、逢うべく人に逢いたいとばかり急遽其中庵をあとにして仙台へと旅立った。その友らの歓待に、松島、瑞巌寺などを逍遙し、雨降る26日、平泉へと足を伸ばし、毛越寺や中尊寺を訪れている。この数日…

ほつれたる去年のねござのしたゝるく

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−10 里見え初て午の貝ふく ほつれたる去年のねござのしたゝるく 凡兆次男曰く、「したたるし」とは言葉遣いや態度の甘え、べたつきを形容する語で、発生は仮名草子あたりか。近世のこと…

里見え初て午の貝ふく

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−10 何事も無言の内はしづかなり 里見え初て午の貝ふく 芭蕉次男曰く、無言といえば山伏の行、山伏といえば吉野の大峰入と見定めた付だろう。その大峰修験のなかでもとりわけ大事で名誉…

何事も無言の内はしづかなり

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>「鳶の羽の巻」−09 ほきごゝろよきめりやすの足袋 何事も無言の内はしづかなり 去来次男曰く、 「道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず」-老子- 「天下の万物は有より生じ、有は…

はきごゝろよきめりやすの足袋

−表象の森− 簡素とゆたかさ渡辺京二「逝きし世の面影」より −№3−・勝海舟に影響を与えたオランダの海軍軍人カッテンディーケ-W. J. C, Ridder Huijssen van Kattendyke、1816〜1866、「長崎海軍伝習所の日々」-は云う、「日本の農業は完璧に近い。その高い段…

かきなぐる墨絵をかしく秋暮て

―世間虚仮― 徳政令判決今日の毎日新聞の社説、「徳政令判決」の見出しが眼を惹いた。暴力団のヤミ金事件に、利息だけでなく元本をも賠償すべしとの最高裁判決が出されたのは10日だったが、法外な利息で生活破綻に陥ったヤミ金被害者に対し、元本も弁済無用と…

人にもくれず名物の梨

―表象の森― 創発、しくじり或いは不祥事<A thinking reed> 安富歩「貨幣の複雑性」創文社より「暗黙知の次元」などの著書で知られるマイケル・ポランニー-Michael・Polanyi、1891〜1976-は、世界を単一レベルの原理で理解しうるという思想を拒否し、下位レ…

まひら戸に蔦這かゝる宵の月

―世間虚仮― ショック・ドクトリン-The Shock Doctrine-「みすず」6月号を読んでいると、「ショック・ドクトリン」、惨事資本主義の真相、なる文字通りかなりショッキングな一文に出会した。昨年の9月発刊と同時に「Democracy Now」で放映され全米で注目を集…

たぬきをおどす篠張の弓

―表象の森― 「月の沙漠」と三好康夫翁と劇団大阪の「月の沙漠」を観た。昨日-7日-の昼だ。開演10分前に着いたのだが、100ほどのすでに客席は満杯状態、下手端の通路を埋める体でパイす椅子が置かれ、その前から2番目の席に着く。休憩なしの2時間、舞台が近す…

股引の朝からぬるゝ川こえて

―世間虚仮― ショック・ドクトリン-The Shock Doctrine-「みすず」6月号を読んでいると、「ショック・ドクトリン」、惨事資本主義の真相、なる文字通りかなりショッキングな一文に出会した。昨年の9月発刊と同時に「Democracy Now」で放映され全米で注目を集…

一ふき風の木の葉しづまる

―四方のたより― お誘い色々6月は意外に舞台やイベントの案内が多く寄せられてくる。 劇団大坂は、今日が初日で、熊本一演出の「月の砂漠」を劇団稽古場でもある谷町劇場で、今週末と来週末、いずれも金・土・日と行う。本拠での熊本演出は「時の物置」以来の…

鳶の羽も刷ぬはつしぐれ

―表象の森― 猿蓑蕉風歌仙、連句の世界−安東次男の「風狂始末」も、「狂句こがらしの巻」にはじまり「霽の巻」「雁がねの巻」とつづいて、愈々「猿蓑」所収の「鳶の羽の巻」へと移る。「猿蓑」は去来・凡兆の編。元禄4(1691)年5月末に選了、同7月に出板。 乾…

田にしをくふて腥きくち

―世間虚仮― おから工事提訴に門前払い四川省地震でとくに目立った校舎倒壊、おから工事の呼称にはゾッとさせられたが、ずさんな建築であまりに脆かった公共財たる校舎群、子どもたちの犠牲が多数を占めたのはその所為だが、これら手抜き工事に賠償責任を求め…