春も見る氷室のわたり気を寒み‥‥

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Information−Aliti Buyoh Festival 2006−

−今日の独言− 強制退去と国際バラ会議・緑化フェア

 大阪市靱公園大阪城公園のホームレスたちに強制退去を実施したのは先週の月曜日(1/30)だった。行政代執行法に基づいてのことだから、無論合法的処置ではある。また、昨年10月から12月にかけて、都合6回にわたり退去勧告と自立支援センター等への入所を勧めてきた経緯もあるから、市側にすれば已むに已まれぬ最終手段という訳だろう。
だが、それでもなお私などには割り切れない不快感が残る。いずれの公園も、5月の国際バラ会議、3月の緑化フェアと国際・国内イベントを控え、整備工事の日程が差し迫っての挙行という行政事情にもすんなりとは肯きがたいものを感じてしまう。
報道によれば、靭公園が17人分計16物件と大阪城公園が4人分計12物件とあった。それがどれほどの量感をなすかおよそ見当はつくつもりだが、あくまでも粘り強く勧告と説得を繰り返しつつ、その一方で粛々と整備工事を進めればよいではないか、と思うのは私ひとりだろうか。
だいいち、ホームレスたちのテントはこの二公園だけでなくあちらこちらになお山とあるのが現状だろう。かりに、大阪市の意志が、開催イベントのため外聞の悪い一切の恥部を排除したいというところにあるならば、そんな欺瞞に満ちた取り繕いはやめておけ、というのが私の意見だ。国際イベントであれなんであれ、たとえテント生活者の彼らの姿が、遠来の来園者たちの視界に曝されることになろうとも、それがこの街の現実の姿ならば致し方ないと腹を括ったほうが、よほど潔いというものだ。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春−2>
 なほ冴ゆる嵐は雪を吹きまぜて夕暮さむき春雨の空  永福門院

玉葉集、春上、春の御歌の中に。
邦雄曰く、こまやかに潤んだ丈高い調べは、名勅撰集の聞こえ高い玉葉を代表する歌風。朝からの雨が夕暮には雪混じりになり、春とはいえ身も心も震えるひととき、余寒への恨みが屈折した美を生み出す。14世紀に到って、古歌の不可思議が、このようないぶし銀の世界を見せる。


 春も見る氷室のわたり気を寒みこや栗栖野の雪のむら消え  源経信

大納言経信集、野外春雪。
氷室−冬に切り出した天然氷を夏まで貯えておくための穴倉。栗栖野−くるすの、山城の国の歌枕、京都市北区西賀茂の南辺りの野、栗野とも。
邦雄曰く、詩歌・管弦・有職に長じていた貴公子経信の技巧を尽した早春歌。氷室をまだまことの雪の残る早春に見る、総毛立つような冷やかさが第三句に簡潔に尽された珍しい春雪の歌、と。


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