月草の心の花に寝る蝶の‥‥

Nakahara050918-023-1

Information<四方館 Dance Cafe>


−今日の独言−

紅葉だよりもあちこちと。
 秋の日は釣瓶落とし、まことに暮れ方は駆けるごとく陽が沈む。
秋晴れもめっきりと涼しくなって、紅葉のたよりも本格化している。
眼に鮮やかな楓の紅葉はたしかに見事な自然の造型そのものだが、山の傾斜一面に雑木のとりどりに彩色された黄葉ぶりを眺めると、なにやら心がしっとりと和む。
そんな時は、笈の小文に引かれた芭蕉の「造化にしたがひ造化にかへれ」を思い出すのだ。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<秋−17>

 月草の心の花に寝る蝶の露の間たのむ夢ぞうつろふ  正徹

草根集、寄蝶恋。初句「月草」の色褪せやすさは詠い古されているとみて、「心の花に」と飛躍を試み、蝶こそは相応しく移ろいやすきものと暗示のうえ、縁語の「うつろふ」で一首を閉じている。
邦雄曰く、巧緻な修辞で創りあげた、手工芸品の感ある恋歌。ただ、この詠風に反感を覚え、採らないのも一見識か、と。


 朝顔をはかなきものと言ひおきてそれに先だつ人や何なる  慈円

拾玉集、無常十首。平安末期〜鎌倉初期。頼朝の支持で摂政となった九条兼実の弟。
邦雄曰く、人の世と朝顔の照応、いづれ儚きの歎きを詠った作は夥しいが、なかでも抜きん出たものは、藤原道信の「朝顔を何はかなしと思ひけむ人をも花はさこそ見るらめ」と、慈円若書きのこの一首だ、と。


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