暮れにけり天飛ぶ雲の往き来にも‥‥

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Information−Aliti Buyoh Festival 2006−

−今日の独言− 嗅覚と記憶

 嗅覚を刺激すれば記憶が鮮明に蘇らせることができるという。
人はだれでも、視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚の五感を介し、なんらかの刺激をきっかけに、ふと遠い過去の記憶をまざまざと蘇らせているのだが、なかでも嗅覚による記憶の想起力は、他の感覚よりすぐれて強いらしいのだ。これを専門用語で「プルースト効果」と呼んでいるそうな。あの「失われた時を求めて」の作家プルーストに因んだ命名らしく、その作品中、マドレーヌを紅茶に浸し、その香りによって記憶が蘇ったという一節があるため、こう名付けられたそうである。
ある学者によれば、嗅覚によって想起される記憶はより情動的であり、また他の感覚によって想起される記憶よりも正確であるとも。この説、嗅覚の鋭敏さに人それぞれ個人差はあろうが、自身の経験に照らしても肯けそうな説ではある。
かほどに嗅覚による刺激が我々の脳にもたらす影響は大きく、癒し効果や睡眠導入、或は逆の覚醒効果にと、日常を香りによって演出するさまざまな商品開発が注目を集めているようだが、なかでも「アロマジュール」という商品は、PCとUSBで繋いで、いろんな香りをブレンドして楽しめるという装置とかで、NTTコミュニケーションズなどですでに販売されているというので、些か驚きもしたのだが、その商品の高価格設定にはさらに驚かされた次第である。

 ――参照:http://hotwired.goo.ne.jp/p-monkey/003/01/index.html
http://www.coden-mall.ntt.com/shopping/shop/coden/category/category.aspx?category=53


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<恋−18>
 吾を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくにならましものを  石川郎女

万葉集、巻二、相聞。伝不詳。
邦雄曰く、天武帝に愛された大津皇子は、雄弁であり文武に秀でた堂々たる美丈夫として聞こえていた。才媛石川郎女はその愛人。彼の贈った恋歌「あしひきの山のしづくに妹待つとわれ立ち濡れぬ山のしづくに」に対する返歌であるが、鸚鵡返しに似つつ、緊張した美しい調べをもっておのが愛をも告白した、と。


 暮れにけり天飛ぶ雲の往き来にも今宵いかにと伝へしがな  永福門院

風雅集、恋二、恋の歌とて。
邦雄曰く、初句切れ「暮れにけり」の太刀で斜にそいだような、きっぱりした調べが、まづ待恋の、常套的な湿潤性を拒んでいて快い。天を仰いで、雲の去来をうち眺め、今夜お越しになりますかと伝言して欲しい、とむしろその朗らかな口調は、他の歌群とは類を絶する。風雅集入集71首、そのうち恋は半数近い38首を占め、なかでもこの一首は抜群、と。

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