深き夜を花と月とにあかしつつ‥‥

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Information「Shihohkan Dance−Café」

−今日の独言− もう満開宣言

 数日前に開花宣言を聞いたかと思えば、今日のバカ陽気に大阪は突然の満開宣言。おまけに夕刻からは雨しきりだ。なんとも気忙しい天候が続いて桜便りもめまぐるしい。今度の日曜日は花の回廊の下、一興パフォーマンスをと予定しているのだけれど、この分ではそれまでもつのかしらんと甚だ心配。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春−39>
 深き夜を花と月とにあかしつつよそにぞ消ゆる春の詇  藤原定家

拾遺愚草、中、韻歌百二十八首、春。
詇(ともしび)−音はコウ。灯ともし、油皿のこと。
邦雄曰く、建久7(1190)年、定家34歳秋の、韻字を一首の末尾に象嵌した。「風通ふ花の鏡は曇りつつ春をぞかぞふ庭の矼(いしばし)」がこの歌と押韻する。まことに技巧的な作品群中、唯美的な眺めの際立つ一首。要は「よそにぞ」、この世の外、異次元に消える春燈を、作者は宴の席から眼を閉じたまま透視する。この世はよそ、うつつにしてまた非在の境、と。


 雲みだれ春の夜風の吹くなへに霞める月ぞなほ霞みゆく  北畠親子

玉葉集、春上、春月を。
生没年未詳、村上源氏の裔、権大納言北畠師親の養女、実父は源具氏。1300年前後に京極派歌人として活躍。新後撰集初出、勅撰入集は52首。
邦雄曰く、さらぬだに霞んでいた月が、更にひとしお霞むという。しかも月の周りは夜目にもしるく乱れ飛ぶ雲。春夜の月に新味を加えるため、さまざまな技巧を創案する。
「うす霞む四方の景色をにほひにて花にとどまる夕暮の色」
は永仁元(1293)年4月の歌合歌だが、「霞める月」以上に美しい。下句の「花にとどまる」など、ほとほと感に堪えない濃やかな表現だ、と。


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