うつつには更にも言はじ桜花‥‥

Kogera0604171

Information<Shihohkan Dance-Café>

−今日の独言− コゲラ

 昭和5年生れという小学校時代の恩師が、退職後の日々の徒然に手慰みとしているのが木版画だというのは、昨年の暮にお宅を訪ねた際に聞いたことだった。
今日が最終日だが、その毎日文化センター木版画教室の「コゲラ」展が西天満のマサゴ画廊で開催されているというので、小学校時代の級友たちにプチ同窓会よろしく観に行こうかと誘いかけてみた。急な呼びかけだったもののどうやら5、6人は集まるようで、恩師にとっては些か面映くもあろうが悦ばしい時ともなればそれにこしたことはない。

 「コゲラ」というのは写真の絵のごとく啄木鳥の一種で、全長15センチほどのスズメ大で、日本産キツツキ類では最も小さいらしい。図鑑によれば写真のように背中には白斑がまだら模様にあると。日本各地に生息しており、その生息地帯によってさまざまな亜種に分類されているというが、はてお目にかかったことがあるのやらないのやら、幼い頃から自然や動植物への興味も関心も希薄なままに育ってしまった朴念仁には、たとえお目にかかっていたとしてもそれと知る観察眼のありよう筈もないというものだ。
ともあれ、午後からは、石田博君の個展に行った2月初旬以来の、マサゴ画廊行きだ。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春−53>
 うつつには更にも言はじ桜花夢にも散ると見えば憂からむ   凡河内躬恒

躬恒集、上、亭子の院の歌合の左方にて詠める。
邦雄曰く、落花の歌の繊細鮮麗なこと躬恒は古今集歌人中でも抜群。夢中散花も新古今集の「いも安く寝られざりけり春の夜は花の散るのみ夢に見えつつ」、家集中の「桜花散りなむ後は見も果てずさめぬる夢の心地こそすれ」と、眼も彩な詠風。とりわけ後者の憂愁に満ちて冷やかな味わいはこれらを超える、と。


 さくらばな散りかひ隠す高嶺より嵐を越えて出づる月影   正徹

草根集、四、春、月前落花。
邦雄曰く、渺茫たる遠景、嶺の山桜が吹雪さながらに舞い乱れ、尾根も頂上も朧にて、花を吹き荒らす風の向こうから、折しも今宵の夕月が朗々と昇りはじめる。上句下句いずれを採っても一首を構成する眺めになるところを、巧みに三十一音に集約、言葉と言葉のひしめきあうような魅力が生れた。定家壮年の歌風をさらに濃厚にしたような趣きは、好悪の分かれるところであろうか、と。


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