花の上の暮れゆく空に響ききて‥‥

0505120221

Information<Shihohkan Dance-Café>

−今日の独言− 公序良俗

 住友金属工業女性差別訴訟が大阪高裁で和解の成立をみた。原告側の勝訴に等しい和解だ。これより先、住友電工住友化学のにおいても同様趣旨の訴訟が同時進行され、すでに2年前に原告側の勝訴的和解をもたらしており、十年余に及んだ住友グループの男女差別訴訟はやっと幕引きとなった訳だ。
彼女たちの闘争の記録は、その名も「公序良俗に負けなかった女たち」と題され、昨年6月に明石書店から出版されている。本書の監修にあたった宮地光子主任弁護士は、この闘いの争点たる判断基準が憲法男女雇用機会均等法ではなく、民法90条「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗に反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス」と規定する「公序良俗」にあり、この古色蒼然の曖昧模糊たる規範概念こそが突破すべきキーワードであったとの趣旨をそのまえがきにおいて伝えているが、問題の本質を喝破した言で大いに肯かせてくれるもの。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春−56>
 今見るは去年(こぞ)別れにし花やらむ咲きてまた散るゆゑぞ知られぬ   夢窓疎石

正覚国師御詠、華を見給ひて。
邦雄曰く、生き変わり死に変わって無明のうつつを通す人、さて、眼前に見る桜にしても、去年儚い別れをして散り失せたあの花、今年もまた散る、来年も咲き変わる。そのゆえ由を誰が知ろうと、駄々をこねるような口調で言い放つ。釈教歌臭は些かもない、と。


 花の上の暮れゆく空に響ききて声に色ある入相の鐘   伏見院

風雅集、春中、題知らず。
邦雄曰く、空は空でも花の上の空は一種の聖域であろう。淡紅にうるみ、時には金色にさざなみ立つ。夕暮の鐘さえもその響きが、この聖域の空に届き、通り過ぎるときは桜色に染まる。それにしても「空に色ある」とは喝采に値する秀句表現。暮春の晩鐘詠も少なくないが、これにかなう作はあるまい、と。


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