人はいさわれは春日のしのすすき‥‥

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−世間虚仮− 蔓延する偽装請負に事業停止

平成11(1999)年12月の改定施行で、従来の職種制限を取っ払ってしまい、港湾運送業務・建設業務・警備業務・医療関係業務の4つを除き原則自由化された「派遣業法」は、さまざまな業種のなかで、実態は派遣労働にすぎないのに請負契約を装う偽装請負を蔓延させ、格差社会を助長・加速させるのに、結果として手を貸してきた悪法の一面は否定しがたい。
報道されているように、人件費削減のため産業界に野放図に横行する偽装請負の実態に、今回やっと重い腰を上げた大阪労働局が事業停止命令を出した「コラボレート」なる労働者派遣・業務請負会社は、派遣大手「クリスタル」の100%出資子会社であるが、この構図に見られるのは、請負契約の相手先であるメーカーなども、実態は派遣にすぎない違法の請負契約を暗黙の了解としつつ、偽装の上に胡座をかいてきたにちがいなく、いわば業界ぐるみの違法行為だということだ。
さらに報道によれば、全国の労働局が昨年度、任意による監督指導で偽装請負を確認したのは、879社中616社と7割にものぼり、さすがにこのひどさには政府厚労省も放置できないとみたか、やっと先月、行政処分も辞さずと各労働局に監督指導・取り締り強化を通達したばかりというが、今回の摘発はその第1号なのだ。
法改定より7年のあいだ、蔓延する偽装請負の実態にこれまで一度のメスを入れることもなく野放しの無法状態にしてきたのは、景気回復こそ至上課題とし、大事の前の小事、格差を助長するも止むなし、とする政府姿勢をそのまま如実に反映したものにすぎないといえるだろう。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<秋−64>
 白玉か何ぞと人のとひしとき露とこたへて消なましものを  在原業平

新古今集、哀傷、題知らず。
邦雄曰く、伊勢物語第六段、姫君をかどわかして、摂津国三島郡の芥川に至る件り。草の葉に置く夜露を生れて初めて見て、あれは何と尋ねる。彼女は真珠と思っていたのだ。伊勢物語きってのあはれ深い挿話である。二条后藤原高子のことと附記がある。もっとも業平の作と明記するのは問題かと思われる。七代集に洩れ、新古今集に採られたのもゆかしい、と。


 人はいさわれは春日のしのすすき下葉しげくぞ思ひみだるる  伊勢

伊勢集。
邦雄曰く、古歌に見える「篠薄−しのすすき」はまだ穂に出ぬ薄を指す場合と群生する細竹をいう時と二種あるようだ。伊勢の歌は後者であり、「しげくぞ思ひみだるる」にかかる序詞に用いられている。虚詞のようにみえる初句の「人はいさ」が、ともすれば暗く沈みがちな忍恋の歌に、一首の張りと勁(ツヨ)さを与えている。「春日」の地名もまた、仄かな明るみをもたらす、と。


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