風をいたみ刈田の鴫の臥しわびて‥‥

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−世間虚仮− 8:94

8:94、なんの数字化といえば、
先進諸国と開発途上国における「乳児死亡率」の格差比だそうな。
UNFPA-国連人口基金-によれば、
生後1年未満で死亡する1000人対比が先進国では8人、
後進の開発途上国では94人、ほぼ12倍している訳だ。
理由はさまざま、貧困ゆえの栄養不足もあろう、紛争の巻き添えに遭うこともあろう。
水の問題、まっとうな飲料水もおぼつかない地域では、たんなる下痢でさえ命取りとなるだろう。
医療の問題、病院もない、医者もいない、あっても移動手段がない、
カネもないから診察など受けられるはずもない。


社会保障・人口問題研究所によれば、
昨年2月に65億人を超えたとされる世界の人口は、
2050年には、ほぼ91億人に達する、という。
ここでも増加比に地域間格差が歴然とある。
2006年現在の各地域別人口は、
アジア−39.5億、アフリカ−9.3億、ヨーロッパ−7.3億、北米−3.3億、南米−5.7億、オセアニア−0.3億
これが2050年には次のように増減すると推定されている。
アジア−52.2億、アフリカ−19.4億、ヨーロッパ−6.5億、北米−4.4億、南米−7.8億、オセアニア−0.4億


毎日新聞「Newsの窓」によれば、
中国の人口増は’33年頃15億でピークを迎え、以降減少に転じるとされる。
それにひきかえ、インドの増加率は緩まず’50年頃には15.9億にまでなるという。
アフリカの人口爆発HIV感染のひろがりで、このところ増加予測も下方修正が続いているという。
それでも’50年には二倍してあまりあると予測されているのだが、
世界のHIV感染者4000万の内、2470万人がサハラ以南に暮らすアフリカの人々であるという事態は、
悲惨の極みであり、南北間格差の極み、人類文明のカタストロフィそのものだろう。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<冬−45>
 眺めやる衣手寒し有明の月より残る嶺の白雪  寂蓮

六百番歌合、冬、冬朝。
邦雄曰く、萱斎院御集百首歌第一の秋に、新古今入選歌「ながむれば衣手涼し」がある。寂蓮の場合結句の「白雪」との照応で、むしろ言わずもがなの感もあるが、ねんごろな強調と見られたのか。ともあれ「月より残る」は手柄で、良経の「雲深き嶺の朝けのいかならむ槙の戸白む雲の光に」との番、俊成は両々、口を極めて褒め、「良き持」と評した、と。


 風をいたみ刈田の鴫の臥しわびて霜に数かく明け方の空  惟明親王

後撰集、冬、題知らず。
邦雄曰く、後鳥羽院の兄惟明親王の作は、千五百番歌合の百首にも明らかなように、なかなかの技巧、玉葉の冬には「木の葉散る深山の奥の通ひ路は雪より先に埋もれにけり」を採られた。「数かく」はふつう水鳥が水上を行きつ戻りつして筋を引くことだが、この歌では、鴫と霜に転じて新趣向を見せた。稲の切り株の点在する景ゆえに、なお野趣も一入、と。


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