なべて世は花咲きぬらし‥‥

DAYS JAPAN (デイズ ジャパン) 2007年 05月号 [雑誌]

DAYS JAPAN (デイズ ジャパン) 2007年 05月号 [雑誌]

Information <連句的宇宙by四方館>

Information 林田鉄のひとり語り<うしろすがたの−山頭火>

−表象の森− DAYS JAPAN」の一枚

G.Wの只中、どこへ行くわけでもなく、身体を休め、午睡をむさぼったあとの昼下がり、傍らの雑誌を手に取る。
フォトジャーナリスト広河隆一が編集する「DAYS JAPAN」5月号は、DAYS国際フォトジャーナリズム大賞の特集号となっている。
世界中から集まった6000点に及ぶ報道写真から選りすぐられたというその写真群は、さまざまにこの地球上に繰りひろげられる惨劇を伝えている。
イラク−米軍パトロールによる無差別な殺戮、あるいはネパールの民主化闘争や武力衝突の続くパレスチナ、などなど‥‥。
「アフリカの光と影」と題された数葉の写真では、結核と栄養失調に苦しむコンゴ国内避難民の半裸体の写真が眼を穿つ。25歳になるというのに骨と皮膚ばかりに痩せこけた黒褐色の後ろ姿は、どう見ても11.2歳の少年にしか映らない。異様に浮き上がった肩甲骨が皮一枚を隔てて奇妙なほどに幾何模様の造形をなし、逆説的なようだが、犠牲身としての光輝を放つ。
絶対的なまでに救いのない現実、
というものがこの世の中には往々あるものだが、その救いのなさを眼前にして、発すべき言葉もないほくらは、ただ膝を屈して額ずくしかないのだろう。
そういえば今日は憲法記念日とて、新聞は改憲問題に関する世論調査を伝えていた。
曰く「改憲賛成51%」。
戦後生まれどころか団塊世代より後の、高度成長しか知らない安部晋三が総理総裁となって、憲法改定はすでに既定路線化しつつある。先頃の国民投票法案成立で大きな一歩を踏み出した。
どこまでも対照的だが、この地球の世紀末を刻む二様の風景にはちがいない。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春−71>
 なべて世は花咲きぬらし山の端をうすくれなゐに出づる月影  木下長嘯子

挙白集、春、暮山花。
邦雄曰く、16世紀末の「紅い月」、それも満開の夜桜の彼方、淡墨色の山から昇るルナ・ロッサ。師は二条派系の細川幽斎ながら、長嘯子の頽廃的な技法は、新古今時代の蘇りを思わせるくらい、鋭く且つ濃厚だ。二句切れの潔い響き、悠然たる体言止め、近世短歌の一異色に止まるものではない。門人に炯眼の士、下河辺長流が現れて、長嘯子の功績を謳う、と。


 おもかげに色のみのこる桜花幾世の春を恋ひむとすらむ  平兼盛

拾遺集、哀傷。
邦雄曰く、拾遺・哀傷巻頭には、清慎公藤原実頼が息女に先立たれた悲歌「桜花のどかけりなき人を恋ふる涙ぞまづは落ちける」が置かれ、2首目が兼盛の哀悼唱和。桜を見れば春毎に、この後いつまで恋ひ悲しむのかと、心に沁む調べだ。亡き人の俤に桜花の色の残ると歌う上句だけでも、天徳歌合せの勝歌「忍ぶれど色に出にけり」を遙かに超える、と。


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