すさまじきわが身は春もうとければ‥‥

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Information <連句的宇宙by四方館>

Information 林田鉄のひとり語り<うしろすがたの−山頭火>

−世間虚仮− おつかれさん会、そして配達復帰

DanceBoxでの公演をまぢかに控え、29.30日と連チャンで稽古をするなど、なにかと忙しい所為もあるが、書き綴ることのなかなか思うに任せぬ。
その30日(一昨日)の夜は、先の選挙関係者たちが「おつかれさん会」と称して集いあった。
稽古のあと、車で一旦帰宅してから、ゆるりとする暇もなく、またぞろ三人で出かける。飲み会とて今度は勿論地下鉄に乗ってだが、子どもは「青と緑に乗るの?」とか言ってご機嫌だ。成る程、四ツ橋線の車両は青のラインがあり、中央線のほうは緑のラインがあるが、これは母親に教えられたか。
「谷口豊子、怒ってます!」などと、選挙中耳にこびりついたと見えるウグイス嬢たちの決めゼリフを声に出してふざけもしている。
寄り合いの会場となったその場所が些か粋なところで、昨年の8月に完成なった、弁天町はORC200に隣接したクロスタワー大阪ベイなる、54階建て高さ200mと、今のところ日本一の超高層マンションの、45階にある共用スペースのスカイラウンジ。
今のところというは、川崎市で現在建築中の超高層マンション(203m)が完成すれば、その誉れも席を譲ることとなるからだが、川崎のそれとて束の間の誉れとや、大阪北浜の老舗デパート三越跡地に建設中のマンションは54階建で高さ209mとなるそうで、09年春完成予定というからそれまでのこと。
マンションの共用スペースというからには、メンバーに居住者が居ないと借用することもできないし、立ち入ることもできない訳だが、谷口靖弘君の小中同窓の友人F君が住民だという。ならば私にも中学の同期生の筈だが、その名を聞かされても、はてどんな顔だったか、思い浮かべることもできなかった。
45.6階の二層を吹き抜けとしたスカイラウンジは、数十名規模のちょっとしたパーティも可能な、広いサロン空間で、集まった20数名の、選挙中の闘士たちもすこぶる寛いで和気藹々、持込まれた酒や料理に舌鼓を打ちつつ、負け戦の悔しさをぶつけるかと思えば、健闘よろしきを讃えあう。
実際、小なりとはいえこの部隊は、私の6.7回の経験においても、短い期間ながら勝れたチームワークを形成しえた。それ故の、終盤の追いあげであり、惜敗だったのだろう。
惜しむらくは、時間があまりにも足りなさすぎた。選挙期間であればあと3日、準備期間であれば2ヶ月早い立ち上げがあれば、きっと勝利の美酒に届き得ていただろう。
それゆえにこそ、時に口惜しさに歯噛みし、またよくぞ健闘したと達成感に満たされては、候補者谷口豊子は今、千々に揺れ動く心を抑えようがないのではなかろうか。
4450票という一旦は獲た票の重さは量り知れないものがあるはずだ。4450人の西区民がそれぞれ「谷口」あるいは「谷口豊子」と記したのである。4年後、64才という年齢を思えば、必ずや再挑戦あるべし、とは軽々といえまいが、この先の自分はどうあるべきか、当面どう身を処していくべきか、確たるその像を描くのはそれほど容易なことではあるまい。
宴は2時間半あまりに至ったか、散会し、ほろ酔いで帰宅の途に。


翌早朝には、およそ3ヶ月ぶりの新聞配達に復帰した。
左肩の不安はまだほんの少しあるにはあるが、それをよいことにいつまでも休んでばかりもいられないと、意を決して販売店の社長を訪ねたのが28日だった。
「明日からでも」という急き込む社長−この人、いつもこの調子で、他人を巻き込んでいこうとするのだが−を、どっこいそうは問屋が卸さず、「イエ、1日から」と此方も頑なに言い張って決めたのだった。
久しぶりに携帯のアラームをONにして眠ったのだが、時間を気にしてか、2時間余りで眼を覚ましてしまって、あとは寝つかれぬままに、午前2時40分頃か、家を出て、自転車を走らせた。
配達区域もガラリと変わって、見習い身分に戻っての再スタートだというのに、なんてこった、雨である。
無情にも今朝も一時的なものだったがひどい降りとなって、二日続きで雨に祟られた。こう雨に降られては再起動など覚束ないというもの。ただでさえ商店街の周りの路地を右に左にと徘徊するような順路が頭に入る訳はない。おまけに店長も好い加減な奴とみえて、初日には順路表さえ用意していなかった。
このぶんでは予定の全コースを独りで廻りきれるようになるのは、思いの外かかりそうである。ヤレヤレ‥‥。
とはいうものの、来月の9日には神戸学院大学での「山頭火」も迫っている。
早く身体に馴染ませ平常のリズムとせねば、そちらへの集中もままならない。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春−70>
 涙より霞むとならばわれぞげに春の名だての袖の月影  貞常親王

後大通院殿御詠、春恋
邦雄曰く、浮名をたてられて袖には涙の雫、月はその面に映り、その月もまた涙に霞む。新古今・恋二、俊成女の「面影の霞める月」を更に朧に、より婉曲にしたかの、複雑微妙な恋歌。二十一代集掉尾の新続古今集撰者花園院の同腹の弟宮だけに、その詩魂歌才は抜群。同題の「我ぞ憂き人の心の花の風いとはれながらよそにやは吹く」も見事だ、と。

 すさまじきわが身は春もうとければいさ花鳥の時もわかれず  伏見院

伏見院御集、哀傷
邦雄曰く、何事にも没趣味で、愉しませぬ心理状態が「すさまじきわが身」どこに春が来たかも関わりのないこと、花よ鳥よの季節も無縁と、噛んで吐き出すような激しい口調であるが、歌の姿は凛乎として侵しがたく、冷ややかな光を放って直立する。さすが13世紀末、後鳥羽院の再来とも言うべき詩帝の作、但しこの歌、玉葉以後の勅撰集にも不載、と。


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