思ひやれ訪はで日を経る五月雨に‥‥

Alti200605

−世間虚仮− Festival Gate 7月末閉鎖へ

DanceBoxことArt Theater dBもCOCOROOMも、とうとう7月末で姿を消すことになったらしい。
5月も末頃の記事だったか、新世界の「フェスティバルゲート民間売却へ」と大阪市が決定したことを報じていたが、
大都会のど真ん中、ビルの谷間を縫って走るジェットコースターで市民の度肝も抜いた光景も、今は遠く夢の跡形の如く、閑古鳥の鳴くようなガランとしたゴーストタウン化した空間に、いくつかのフード店やコンビニなどと、新世界アーツパーク事業としてDanceBoxやCOCOROOMなどがアーティストたちへ活動の場を提供してきたユニークスペースも、破綻による累積赤字の肥大化には抗いようもなく、とうとう露と消えゆくことになったのだ。
大阪市は利用者たちへの言い訳がましい取り繕いのように、昨年末、施設空き区画の公共的な利用案を募集したものの、一旦売却へと舵を切った大方針が転換するはずもなく、折角寄せられた5つの回生案も、書類による一次審査だけで却下、いわば門前払いのようなもので、こうなることは端から織り込み済みのことではなかったかとさえ思われる。
これで、総工費393億円をかけた土地信託事業の施設が、現状有姿のままで、時価評価額8億円程度で叩き売られことになった訳だが、さすが太閤さんのお膝元、なんと気前の良いことかと開いた口もふさがらぬ。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<夏−68>
 思ひやれ訪はで日を経る五月雨にひとり宿守(も)る袖の雫を  肥後

金葉集、恋上、堀河院の御時、艶書合によめる。
邦雄曰く、訪れのない日々はさらぬだに悲しいものを、まして明けても暮れても雨、雨。来ぬ人を待つ袖は、雨のみか涙でしとどに濡れる。日を「経る」も宿「守る」も、「降る・漏る」と雨の縁語。命令形初句切れが切迫した作者の思いを伝え、口説くような粘りのある調べもこの恋歌に相応しい。肥前守藤原定成の女で、白河天皇皇女令子内親王に仕えた、と。


 呼ばふべき人もあらばや五月雨に浮きて流るる佐野の舟橋  越前

邦雄曰く、いささか劇的な二句切れに、すわ何事と目を瞠る。歌枕の「佐野の舟橋」が、増水で流失したという。拉鬼体(らっきてい)の一種であろう。作者は後鳥羽院皇女嘉陽門院に仕えた才媛で、正治2(1200)年院二度百首以来注目を集め、新古今初出のなかのなかの技巧派だ。判者急逝のため無判だが、左は藤原隆信の「空は雲庭のあさぢに波こえて軒端涼しき五月雨の頃」、と。


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