時雨とはちくさの花ぞ散りまがふ‥‥

Ichibun9811270551

−世間虚仮− 北朝鮮無残

我が国では8月に入ってから記録破りの猛暑つづきだが、その太平洋高気圧の煽りを受けてかお隣りの朝鮮半島ではこれまた記録的な集中豪雨が続いた。
とりわけ金正日独裁の北朝鮮では疲弊しきった国土に追い打ちをかける大災害となったようで大変な被害をもたらしている。
報道による被害数値を列挙すれば、8万8400世帯の住宅が全・半壊、被害者は30万人以上、さらには全耕地面積の11%が流失または浸水、400箇所の工場や企業が浸水、という。
自然の猛威であってみれば不可抗力と天を仰いでひたすら歎くしかないのだろうが、全耕地面積11%に及ぶ流失・浸水とは、積年にわたる土壌の疲弊や治水灌漑全般、国土の荒廃なくしては、これほどの被害には至るまいにと推量されるところだ。
そんな一方で、10万人以上の選良(?)の民が一糸乱れず繰りひろげる平壌での「アリラン」が、世界最大のマスゲーム・芸術公演としてギネスに認定された、という報道が並んで伝えられている。
目出度いといえばお目出度いニュースにはちがいなく、最貧国北朝鮮に君臨する独裁者金正日はさぞご満悦だろうが、われわれ対岸からみればこれほど噴飯モノの話はなく、貧困と災害と、さらには人災に喘ぎ、塗炭の苦しみのなかにいる人々を思えばただただ暗澹としてくるばかりだ。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<雑−42>
 聞くたびにあはれとばかり言ひすてて幾夜の人の夢を見つらむ  順徳院

後撰集、雑下、題知らず。
邦雄曰く、父帝後鳥羽院の作風をさらに微妙に屈折させて、一読真意を測りかねる歌も少なくないが、味わいはそれゆえに一入。「あはれとばかり言ひすてて」の冷ややかな響きなど、稀なる余情を残す。家集に同じく「題知らず」で「ながめわびぬ見果てぬ夢のさむしろに面影ながら残る月影」あり。前歌に似た恋の影を揺曳しながら、侘しい抒情は忘れがたい、と。


 時雨とはちくさの花ぞ散りまがふなにふるさとに袖濡らすらむ  藤原義孝

拾遺集、哀傷。
邦雄曰く、天延2(974)年9月、義孝が20歳で他界して後、賀緑法師の夢に現れて告げた歌と註記がある。極楽浄土は曼陀羅華に分陀利華、さまざまのめでたい花々が咲き乱れて、この身は至福、現世の人々は何を泣かれることがあろうとの言伝であった。死者の詠として勅撰に入るほどの天才、この歌も見事である。なお賀緑法師は比叡山阿闍梨と伝える、と。


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