ねやの上に雀の声ぞすだくなる‥‥

Alti200811_2

−四方のたより− Alti Buyoh Fes.2008

来年2月に行われる「アルティ・ブヨウ・フェスティバル2008」の総合チラシが届いた。
今回は2/9.10.11の3日間で18の演目が並ぶ。地元京阪神を中心に各地から18の団体または個人が参加するわけだ。
その陣容をみれば、東京からSoloistが2組、ひとりはMimeとDanceのあいだに遊ぶ人のようだ。もうひとりは京都出身のようだが東京へと転身、折田克子に師事しているらしい。
そして埼玉からの若松美黄、なんとこの御仁は’99年に紫綬褒章を受賞しているという舞踊家であり振付作家。「自由ダンススタジオ」を主宰して40年という名にし負う超ベテランが、単独名での参加だからSoloを饗されるのであろう。1934年生れというからすでに73歳、暗黒舞踏大野一雄ならいざ知らず、動きも多いDance系では稀少だろう。
静岡から参加のGroupは美術など他ジャンルとの競演や屋外でのPerformanceに特色を示すようだ。さらに韓国から参加のCompanyが一つあるが、これがどんな踊りを見せるのか情報が取れなくて皆目見当がつかない。
あとはすべて京阪神のGroupだが、その13のうち神澤つながりが、私とはほぼ同時代から師事してきた浜口慶子、80年代前後の中村冬樹、そして神澤が近大芸術学部に奉職してからの阿比留修一と4人を数えるのには、ひとしきり微かな感慨がさざ波立つ。これを多いとみるか少ないとみるべきか別にして、神澤舞踊の精髄がそれぞれの表象に心身にどのように流れ、影を落としているのかいないのか。そのあたりを見定めてみるのも一興であるにはちがいない。
いずれにせよ3日のあいだで20分内外の小宇宙ながらさまざまなものを見られるというのは、自分たちが出品すること以上に貴重な機会とて、私などのように他者の作品を観るに腰の重すぎる者にとってはまことにありがたい企画である。
この催し、京都府の厚い援助あっての長年にわたる継続である。さらなる長寿を期したいと思う。

フェスティバル詳細については<此方>を覗いていただければ幸い。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春−94>
 ねやの上に雀の声ぞすだくなる出で立ちがたに子やなりぬらむ  曾祢好忠

好忠集、毎月集、春、三月中。
邦雄曰く、やっと巣立ちできるまでに雀の子が生いた。集(スダ)く雀の愛すべきかつ騒がしい囀りが響いてくるようだ。古歌に歌われる鳥は限られ、雀はめずらしい。西行が歌った男童(オワラワ)なども稀少例の一つ。三月下にも浅茅生に雀が隠れるさまを歌った作があり、野趣と俗調はまことに清新だ。10世紀後半、丹後掾の身分で歌合に出ていた記録等があるのみ、と。


 初瀬女の嶺の桜のはなかづら空さへかけて匂ふ春風  藤原為家

古今集、春下、洞院摂政の家の百首の歌に。
邦雄曰く、万葉に泊瀬女が造る木綿花の歌あり、その白木綿花の代わりに花鬘にしたいような山桜の盛り、序詞的な用法だがこの初瀬女、従三位頼政卿集の桂女の歌と共にめずらしくかつ愉しく、作品が躍動する。闊達な為家の個性が匂い出た精彩ある春の歌だ。貞永元(1232)年、作者34歳の壮年の作。この年、作者の父定家は、新勅撰集選進の命を受けた、と。


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