田にしをくふて腥きくち

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―世間虚仮― おから工事提訴に門前払い

四川省地震でとくに目立った校舎倒壊、おから工事の呼称にはゾッとさせられたが、ずさんな建築であまりに脆かった公共財たる校舎群、子どもたちの犠牲が多数を占めたのはその所為だが、これら手抜き工事に賠償責任を求める親たち住民の提訴が、中国当局の事実上の阻止や裁判所の受理拒否など、次々と門前払いになっているのが報じられている。

北京五輪を控えて、外国の援助隊や報道関係を受け入れ、開かれた国をアピールしてきた中国政府だが、この問題、どこまでも強権で抑えつけていく手法では、収拾のつく筈もなかろうものを‥。

さらに気がかりは、被災地の四川省は核の要衝地帯といわれるが、震源地に近い核施設損壊の疑惑もいまだ消えず。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「雁がねの巻」−36

  花の比談義参りもうらやまし  
   田にしをくふて腥きくち  芭蕉

腥-なまぐさ-き

次男曰く、病弱の子をだしにしているが、談義参りに気が進まぬのは実は口が腥いからだろう、とからかって挙としている。田螺は仲春の季。

挙句は前に寄添うて一巻成就を寿ぐ、平らかな作りを通例とする。逆付気味に理由を読替えた作りは輪廻になりかねないが、むろんその辺は承知のうえで田螺などを持ち出したのは、「痩てかひなき」を虚-冗談-とするはからいである。

こういう減らず口の終り方が出来るのも両吟という応酬あってのことで、句姿は、ほろ苦さと感傷の程よくのこるうつりの趣だ、と。


「雁がねの巻」全句−芭蕉七部集「阿羅野」所収

雁がねもしづかに聞ばからびずや   越人  −秋 初折-一ノ折-表
 酒しゐならふこの比の月      芭蕉  −月・秋
藤ばかま誰窮屈にめでつらん     芭蕉  −秋
 理をはなれたる秋の夕ぐれ     越人  −秋
瓢箪の大きさ五石ばかり也      越人  −雑
 風にふかれて帰る市人       芭蕉  −雑
なに事も長安は是名利の地      芭蕉  −雑 初折-一ノ折-裏
 医のおほきこそ目ぐるほしけれ   越人  −雑
いそがしと師走の空に立出て     芭蕉  −冬
 ひとり世話やく寺の跡とり     越人  −雑
此里に古き玄番の名をつたへ     芭蕉  −雑
 足駄はかせぬ雨のあけぼの     越人  −雑
きぬぎぬやあまりかぼそくあてやかに 芭蕉  −雑
 かぜひきたまふ声のうつくし    越人  −雑
手もつかず昼の御膳もすべりきぬ   芭蕉  −雑
 物いそくさき舟路なりけり     越人  −雑
月と花比良の高ねを北にして     芭蕉  −花・春
 雲雀さへづるころの肌ぬぎ     越人  −春
破れ戸の釘うち付る春の末      越人  −春 名残折-二ノ折-表
 みせはさびしき麦のひきわり    芭蕉  −雑
家なくて服裟につゝむ十寸鏡     越人  −雑
 ものおもひゐる神子のものいひ   芭蕉  −雑
人去ていまだ御坐の匂ひける     越人  −雑
 初瀬に籠る堂の片隅        芭蕉  −雑
ほとゝぎす鼠のあるゝ最中に     越人  −夏
 垣穂のさゝげ露はこぼれて     芭蕉  −夏
あやにくに煩ふ妹が夕ながめ     越人  −雑
 あの雲はたがなみだつゝむぞ    芭蕉  −雑
行月のうはの空にて消さうに     越人  −月・秋
 砧も遠く鞍にゐねぶり       芭蕉  −秋
秋の田をからせぬ公事の長びきて   越人  −秋 名残折-二ノ折-裏
 さいさいながら文字問ひにくる   芭蕉  −雑
いかめしく瓦庇の木薬屋       越人  −雑
 馳走する子の痩てかひなき     芭蕉  −雑
花の比談義参りもうらやまし     越人  −花・春
 田にしをくふて腥きくち      芭蕉  −春


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