家普請を春のてすきにとり付て

Db070510015

―世間虚仮― 世界に冠たるクマゼミ

大阪のクマゼミは、世界で一番煩い、のだそうな。
最盛期には長居公園で93.8dbを記録したというその音量のほどは、騒々しい工場内を上回るほどといわれるから凄まじい。

「大阪のクマゼミの発生-予測と実況-」というsiteがあり、今年の予測と日々の実況を記録してくれている。

これによれば、今年の初鳴日は7月9日だったとかで、18日にはすでに騒音期-10分間平均で70db以上-に入っているそうな。
さらに喧噪期-同じく80db以上-に突入し、そして超喧噪期-同90db以上-を迎え、そのピークへと達し、やがて喧噪期へと下り、クマゼミの夏を閉じるということになる。
siteの記録によれば、18日に736db、19日に73.5dbと推移し、20日には79.0dbとなっているから、喧噪期目前というわけだ。

私が住む処で、朝の寝起きに蝉の鳴き声を聞いたのは、たしか12日だったから、3日遅いことになる。場所が異なるので一概にいえまいが、この伝でいけば今朝にも騒音期に入ったかということになる。いずれにせよ日毎その音量が増し増してきているのは、この耳が知っている。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「梅が香の巻」−03

   処々に雉子の啼きたつ   

  家普請を春のてすきにとり付て  野坡

次男曰く、梅は桜と違って中国からの渡来で、本邦自生ではない。したがって薬用にせよ観賞にせよ日本の梅は古来栽培種で、山路のあちこちに随意に見かける花木ではない。

「山路」は山里だと見定めて、「-啼-たつ」を「家普請」-立つ、建つ-に奪っている。「手透き」も「処々」からの映りの工夫だ。

農家の手透きは小正月も済んだあと、陰暦1月末から2月初にかけて。句は景の春色を人事のそれに転じ、雉子の鳴声の勇ましさも家普請の音にひびかせている。嫁迎えか、隠居か、別家か、前句のめでたさをも移した普請であることは言外に現れる、と。


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