物おもふ身にもの喰へとせつかれて

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―世間虚仮― Bush fire

オーストラリア南東部を襲った記録的猛暑から自然発火したという山火事が、なお燃え続けて鎮火する気配がない。州都メルボルンのあるビクトリア州に集中しているようで、この州だけでもなんと400ヶ所で発生したという。

Netで「Victoria Fires Map」なるページがあった。Googleの地図を利用した山火事発生の各地域が示されたものだ。メルボルン北部に集中してある6ヶ所ほどの赤いマークは火災が続いている地域を表しているのだろう。

猛暑の乾燥期とユーカリの木が圧倒的に多い森林地帯という風土がもたらす自然災害ということだが、油脂を多く含むユーカリの木はとかく自然発火しやすく、風土と生態系がもたらす循環という自然の摂理だとしても、一方、最終的に死者400名を数え史上最悪の被災になるだろうと云われる、その失われし人命を思えば、もっと人知を尽くしてなんとか防止策はないものかと情けなくも悔しいではないか。

ユーカリ花言葉の一つに「再生」があるそうだ。炎で熱せられることで新芽が出やすくなる特性が、ユーカリにはあるという。逞しいその生命力で、灰燼と化した大地にも、やがては緑が復活、再生されるのだろうか。

ブッシュ・ファイヤーの呼名に、不謹慎にも先の米大統領を連想してなにやらザワザワと嫌な感触を抱いてしまったが、bushは灌木や低木のことだから、Bush fireと呼ばれているのだと思い至り納得。

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「花見の巻」−13

   ほそき筋より恋つのりつゝ  

  物おもふ身にもの喰へとせつかれて  翁

次男曰く、其人の付だが、あしらい-もの食う-を介添の趣向としたところが工夫である。

仮にここを「物おもふ身に箸とるも苦労にて」とでも作れば、三句、同じ人のくどくどとした性情の付伸しにしかならない。「せつかれて」留は後付とも読め-せつかれればいっそう恋しさがつのる-、翻って、一途な物思をほぐしにかかったとも読める-恋離れを促す-作りである。同じ「て」留でも「苦労にて」では後付の方が消える。「せつく」に微妙なはたらきがある。

其人が女らしいと覚らせるのもここでの連想によるもので、「ほそき筋より恋つのりつゝ」だけでは男女いずれとも決めかねる。

「物」「もの」の重複が気になるが、物思と喰物とでは相容れないという滑稽を、むしろ意識的に合せのたねにしているようだ、と。

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