双六の目をのぞくまで暮かゝり

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Information−四方館 DANCE CAFE –「Reding –赤する-」

―表象の森― 天然痘と赤

日本語の赤と英語のRed、両者が指す色は些か異なっているというのをどこかで聞いたことがある。
JISの慣用色名にならえば、赤はマンセル値4R 3.5/11に対して、Redは5R 5/14となっており、Redに比べて赤のほうが少しばかり色濃く、カーマイン-carmine. 深紅色-といわれる色に近似している。

赤にまつわる話でひときわ関心をそそられるのは、人類史上永年の病敵であった天然痘における迷信風習の類だ。
江戸時代の我が国では、天然痘除けとして赤い達磨が用いられたという。痘瘡神が赤色を嫌うとされ、患者も家族もみな赤色の着物を身につけ、赤い布団、赤い玩具と、身の回りの一切を赤い色で覆い尽くすほどに徹底されたというから驚かされるが、それほどにこの病が畏れられてきた証左でもあるのだろう。沖縄でも病人に赤を着せては、歌・三味線で騒ぎ立て痘瘡神をほめたたえ夜伽をするといった体で病魔退散を願った、とそんな風習がごく近い頃まで残っていたらしい。

Wikipediaでは、天然痘と赤にまつわるこういった風習の発祥を、16世紀の神聖ローマ帝国カール5世が幼い時疱瘡を罹患し、その際に赤い衣類を着、部屋の装飾品など一切を赤色にし、赤い光で部屋を充たしたところきれいに治ったという事件に関連づけている。以来この風習はヨーロッパに広く伝わって長く残ってきた、とも。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「花見の巻」−25

   酒ではげたるあたま成覧  

  双六の目をのぞくまで暮かゝり  翁

次男曰く、酒灼けした禿頭を属性にして関守を双六打に奪っても、それだけでは俳諧にならない。

「まで暮かゝり」と時分の付としたゆえんだが、併せて「双六に長ずる情を以て、酒にはげぬべき人の気味」-三冊子・赤-の付としている。

いずれも一朝一夕に成ることではない、というところが笑いのみそだ。赤ら顔は日暮になっても覗き込む必要はない、という笑いの含みもあるか、と。

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