雨のやどりの無常迅速

Dancecafe081226165

―世間虚仮― 波乱の白熱二番

昨夜来の寝不足が祟っていたのだろう、気怠さに身体中が支配されて、ただ茫としたままに、なんということもなしに結び近くの数番を眺めていたら、波乱の結び二番、白鵬朝青龍の両横綱を破った琴欧州日馬富士の、気力満点の白熱相撲に思わず刮目、中継画面に惹き込まれてしまった。

相撲ファンなどである筈もなく、偶さか見る夜遅くのダイジェスト版ならともかく、まず滅多に見ることなどない相撲中継なのだが、千秋楽前のこの日、先場所から33連勝と全勝街道を走る白鴎と大関昇進以来あまりパッとしない大器琴欧州、1敗同士の朝青龍大関昇進3場所にしてようやく本領発揮の日馬富士、どちらもがっぷり組んだ力相撲で、決まり手はそれぞれ上手投げと外掛けだが、ともに見事に決まった力相撲で、結びの二番続けてこんなに醍醐味あふれた大一番というのは、なかなかお目にかかれないのではないか。

この4者がともに外国人力士などというのはどうでもよいこと。だいたい相撲が国技なんていうのは、相撲協会が勝手に名告っているに過ぎないじゃないかと思っている私であれば、日本人力士の退潮振りも、横綱の品格がどうのといった騒ぎも、問題の本質からは遠いものじゃないかと思われ、空騒ぎばかりが目立つ昨今の相撲界だが、偶さかこういう一番を眼にすると、さすが相撲というのは格闘技としてよくで出来た、かなり秀逸なものだ、とつくづく感じ入る。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「灰汁桶の巻」−32

  物うりの尻声高く名乗すて  

   雨のやどりの無常迅速  野水

次男曰く、前句の伸しである。場所は賀茂とはかぎらぬ。俄雨に遭って慌てて駆込むのは軒下がふさわしかろうが、茶屋の床几と考えてもよし、木の下でもかまわぬ。「尻声高く名乗すて」の気分から「無常迅速」を取出したように見える作りだが、雨やどりが即無常迅速に結びつくわけではない。

晴れるあてが有るでもなく無いでもないからこそ、いつの間にか無為の時を過してしまうのが、雨やどりである。あたら光陰を無にする。雨やどりを口惜しいと思うのは野水ばかりではない。

句は、「尻声高く名乗すて」て駆込んだだけに、いっそう、雨やどりの儚さが身に沁みる、と言っている。笑があるだろう。諸注は相宿りと決込んでいるが、そうでなくてもかまわぬ句だ、と。

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