穿いて下さいといふ草鞋を穿いて

Dancecafe080928150

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、10月23日の稿に
10月23日、曇、雨、佐土原町行乞、宿は同前-富田屋-

あぶないお天気だけれど出かける、途中まで例の尺八老と同行、彼はグレさんのモデルみたいな人だ、お人好しで、怠け者で、酒好きで、貧乏で、ちよいちよい宿に迷惑もかけるらしい。-略-

行乞中、不快事が一つ、快心事が一つ、或る相当な呉服屋の主
人の非人道的態度と草鞋を下さつたお内儀さんの温情とである-草鞋は此地方に稀なので殊に有難かつた。
シヨウチユウと復縁したおかげで、朝までぐつすり寝た、金もなく心配もなしに。
まだ孤独気分にかへれない、家庭気分を嗅いだ後はこれだから困る、一人になりきれ、一人になりけれ。

※表題句の外、2句を記す

―世間虚仮―拾った議席

昨夜から選挙速報の洪水、4年前の郵政解散とほぼ真逆となった結果の民主と自民だが、懸念されていたとおり、比例区候補の不足から、他党が議席を得るという不合理なケースが4例も出来。

近畿ブロックで民主は13議席獲得の得票だが、名簿では2人不足する事態となって、自民と公明にそれぞれ1議席振られた。
加えて、「みんなの党」も東海・と近畿ブロックで1議席ずつ獲得できる得票に達したが、名簿登載された候補者が重複立候補していた小選挙区で得票率10%に届かなかったため、公職選挙法規定により復活当選できないという羽目に。これによって東海の議席民主党へ、近畿の議席自民党へとそれぞれ割り振られている。

この規定で、凋落の自民は2議席拾ったことになり、民主は−2+1の1議席損、公明が1議席の得、なんともやりきれない悔を残すのがみんなの党だが、とにかく不合理なことこのうえない公職選挙法ではある。

―今月の購入本―
佐藤信五味文彦.他「詳説日本史研究」山川出版社
ご存じ高校生向日本史教科書「詳説日本史」の学習参考書。08年の10年ぶりの教科書改訂に合せて全面改訂して出版されたもの。多色刷りで、豊富な叙述内容と史料や地図・図解をふんだんにとり入れられているから、時折引っ張り出して読むには向いていよう。

加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」朝日出版社
世界を絶望の淵に追いやりながら、戦争は生真面目ともいうべき相貌を湛えて起こり続けた。その論理を直視できなければ、かたちを変えて戦争は起こり続ける‥。国民の認識のレベルにある変化が生じていき、戦争を主体的に受けとめるようになっていく瞬間というものが、個々の戦争の過程には、たしかにあったようにみえる。それはどのような歴史的過程と論理から起こったのか、その問によって日本の近代-日清戦争から太平洋戦争-を振り返る。

長谷川眞理子「生き物をめぐる4つの「なぜ」」集英社新書
発光生物は何のために光るのか、雄と雌はなぜあるのか、角や牙はどう進化したのか…。生物の不思議な特徴について、オランダの動物行動学者ニコ・ティン バーゲンは、四つの「なぜ」に答えなければならないとした。それがどのような仕組みであり-至近要因-、どんな機能をもっていて-究極要因-、生物の成長に従いどう獲得され-発達要因-、どんな進化を経てきたのか-系統進化要因-、の四つの要因だ。本書は、これら四つの「なぜ」から、雌雄の別、鳥のさえずり、鳥の渡り、親による子の世話、生物発光、角や牙、ヒトの道徳といった、生物の持つ不思議な特徴に迫り、生物の多様な美しさやおもしろさを現前させる。

斎藤環「思春期ポストモダン幻冬舎新書
成熟が不可能になった時代=ポストモダンという永遠に続く思春期=成熟前夜になって顕在化し始めたNet社会・DV・摂食障害不登校・ひきこもりといった現象と、その至近距離に若者という存在。筆者によれば、不登校やひきこもりというのは、彼ら自身が何か本質的な問題を抱えているというよりも、社会との、あるいは家族との接続に原因がある、間主観的な問題なのである。言わば、病むのは脳でも精神でもない、人間関係である、と。一旦発生したそれらの接続ミスは、本人に過度なプレッシャーを与え、ますます追い詰めていくという悪循環を成る。それが「病因論的ドライブ」なのだ、と。

松井今朝子「似せ者」講談社文庫
江戸の歌舞伎を題材に時代小説のエンターテイメントとなった著者表題作を含む4編を収める。

その他に、広河隆一編集「DAYS JAPAN」2009/08と2009/09

―図書館からの借本―
・ジェフリー.F.ミラー「恋人選びの心−性淘汰と人間性の進化?」岩波書店
・ジェフリー.F.ミラー「恋人選びの心−性淘汰と人間性の進化?」岩波書店
人は何を基準に恋人を選んでいるのか。人を魅力的に見せる、身体・装飾・言語・美術・スポーツ・道徳性・創造性といった、深く人間性に関わっている特徴は,どうして生まれてきたのか。自然淘汰の理論ではどうにも説明がつかなかったこれらを.恋人選びという視点に拠りつつ,ダーウィ ンに提唱されながらも省みられなかった性淘汰理論で、長年の進化の謎を解き明かす。前半部は良質の性淘汰理論の総説。

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