山風澄みわたる笠をぬぐ

Santouka081130011

―山頭火の一句―昭和5年の行乞記、10月25日の稿に
10月25日、晴曇、行程3里、高鍋町、川崎屋

晴れたり曇ったり、かはりやすい秋空だつた、7時過ぎ出発する、二日二夜を共にした7人に再会と幸福を祈りつつ、別れ別れになつてゆく。

私はひとり北へ、途中行乞しつつ高鍋まで、1時過ぎに着く、2時間ばかり行乞、此宿をたづねて厄介になる、聞いた通りに、気安い、気持よい宿である。

今日は酒を慎んだ、酒は飲むだけ不幸で、飲まないだけ幸福だ、一合の幸福は兎角一升の不幸となりがちだ。
今夜は相客がたつた一人、それもおとなしい爺さんで、隣室へひつこんでしまつたので、一室一人、一灯を分けあつて読む、そして宿のおばあさんがとても人柄で、坊主枕の安らかさもうれしかつた。

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