朝から泣く児に霰がふつてきた

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−表象の森− ゆみのための、Narration Profile
−以下は、昨夜、書き上げた原稿。

・浪速の都大阪の北、関西随一を誇る梅田を中心とした繁華街を、東に少し外れると、学問の神様・天神さんで名高い、菅原道真公を祀る天満宮がある。
近頃は、その鳥居を挟んだ門前に、4年前にオープンした上方落語の殿堂・天満天神繁昌亭が、その名のとおり大繁盛、連日賑わいを見せているのは、みなさんよくご存じのことでしょう。
この天満宮を皮きりに、日本一長いと言われる天神橋商店街が、まっすぐ南北へと伸びているが、天神さんからちようど500?ばかり北へ行った、その東側の界隈には、昔、大江戸の町は南と北に、浪速大阪では東と西にと、泰平の治安を担った町奉行を配したが、その所縁-ゆかり-を今に伝えて、与力町-よりきまち−と呼ばれる一角がある。
その与力町で、ゆみは生まれ、育った。

・松浦ゆみ、その幼かりし子ども時代は、天神祭りの小気味よく鳴り響く鐘や太鼓に包まれて、明るくおおらかに成長していく。
暑い暑い夏の盛りがやってくると、天神さんのお祭だ。大阪じゅうの善男善女が、東から西から北から南から、どっと繰り出しては溢れかえる。
天神さん近くの与力町で育ったゆみは、その界隈の抜け道裏道を知り尽くしていた。母さんに振袖の浴衣を着せてもらったゆみが、弾けるような笑顔で元気いっぱい駆け出していく。
天満宮の境内には、見世物小屋や屋台がこれでもかとばかり立ち並んでいる。食いしん坊のゆみは、必ずといっていいほど林檎アメとイカ焼きを頬ばっていたな。怖いもの見たさに覗きからくりを背伸びしながら覗いていたこともあったっけ‥。
そうそう、覚えているか、ゆみ? お前がだんじりや神輿を夢中になって追っかけ、とうとう父さんや母さんたちとはぐれてしまって、(笑)、ずいぶん泣きべそをかいていたっけな‥。
ゆみ、あれは、お前が幾つの時だったか‥‥?

・ゆみ、お前は幼い頃から唄が好きだった。覚えているか、ゆみ?
まだ小学校へ上がる前から、近所の小母さんたちに上手い上手いと囃されて、得意の歌を唄っては、ご褒美だとよくお小遣いを貰ったりしていたな‥‥、そんな時のお前は、嬉しくてたまらないって顔してた。
父さん、今でも覚えているぞ。貰った十円玉を握り締めては、得意満面で駆けてく、嬉しくてはちきれんばかりの、ゆみの、あの笑顔――。

・負けん気だったけど、いつも愛嬌たっぷりだった、ゆみ。
そんなお前が、大きくなって、歌がいっぱい唄えるバスガイドさんになった時は、父さんちっとも驚かなかったが、いつのまにか、仕事のかたわら、ギンギンに激しいロックバンドをバックに歌うようになったのには、もうビックリ、父さん魂消てしまったよ。もちろん母さんだって、きっとそうだったろうよ。

・あの頃から、もう、どれほどの年月が経ったのだろう?
あれからまもなく、父さんも母さんも、天国なんて処に来てしまったから、もう年も取らないし、歳月なんてものも分かりゃしない。こっちには時間なんてない、ずうっと今みたいなものなんだから‥。
だけど、ほら、ゆみがとうとうほんとの歌い手さんになった時、メジャーデビューって言うんだって、あの時の晴れやかなショー、お客さんをいっぱいにした舞台、ゆみ、とても輝いていたよ、父さん眩しかった。ゆみ、とても綺麗だった、父さん嬉しかった。母さんも喜んでたぞ、声あげて嬉し泣きしてた‥。

そしていま、今夜のゆみも綺麗だよ、とても輝いている。
だってほら、こんなに沢山の、みなさんが喜んでくださるから、こんなに大勢の、みなさんが可愛がってくださるから、そう、だから、ゆみは、これからも、ずっと−−。


―山頭火の一句― 行乞記再び -21-
1月14日、風が寒い、2里歩く、今宿、油屋

もう財布には一銭銅貨が二つしか残つてゐない-もつとも外に五厘銅貨10銭ばかりないこともないが-今日からは嫌でも応でも本気で一生懸命に行乞しなければならないのである。

午前は姪ノ浜行乞-此地名も珍しい-、午後は生の松原、青木松原を歩いて今宿まで、そして3時過ぎまで行乞する、このあたりには元寇防塁の趾跡がある、白波が押し寄せて松風が吹くばかり。

途中、長垂寺といふ景勝の立て札があつたけれど、拝登しなかつた、山からの酒造用水を飲ませて貰つたがうまかつた、ただしちつとも酔はなかつた!

俳友に別れ、歓待から去つて、何となく淋しいので、少々焼酎を飲み過ぎたやうだ、酒は3合、焼酎ならば1合以下の掟を守るべきである。

  • 略-、長崎では、家屋敷よりも墓の方が入質価値があるといふ、墓を流したものはないさうな、それだけ長崎人の信心を現はしてゐる。

※表題句は、1月12日記載の句。

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Photo/生の松原−現.福岡県西区今津

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Photo/元寇防塁

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