<肥後浪曲>から<肥後琵琶>へ――

小沢昭一が自身の足で集めた労作「日本の放浪芸」は
’71年から’77年にかけて全4部作として順次発売されたという
然れば、私が全集を買い求め、ひととおり聴いていたのは’80年頃だろう。
そのなかで格別に心に留まったのが山鹿良之の琵琶弾き語りの世界であった。

但し、今でこそ山鹿良之と言えば<肥後琵琶>とされているが、
当時の放浪芸シリーズでは<肥後浪曲>と紹介されていたと記憶する。
三味線ではなく、琵琶による弾き語り、であったにも拘わらずだ。
この芸を見すぎ世すぎとして生きてきた山鹿自身
戦中から戦後における浪曲の全盛期にあっては
そう言わざるを得なかっただろうし、世情にもそれが相応しかったのだろう。
<肥後浪曲>から<肥後琵琶>への呼称の変移は
「放浪芸」の収録.紹介に端を発してか
山鹿良之の琵琶弾き語り芸が、好事家にひろまり世間の注目を集めてきたからだ。
意外にも−
2007年に発売されたというCD3枚組の「肥後の琵琶弾き 山鹿良之の世界」と
「日本の放浪芸」に収録されている曲はすべて異なっている。
解説書に紹介されている各曲の収録時期を見て合点がいったが
道成寺」のみが’89年で、他の曲は、古くは’63年、他はすべて70年代前半だ。
となれば「放浪芸」収録の時期とほとんど同じ頃だということ。
同じ曲を収録する訳にはいくまい。

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