春が来た水音の行けるところまで


<四方の風だより>


<お彼岸に琵琶の響きのひととき>

琵琶の世界で唯一人の人間国宝である筑前琵琶の山崎旭翠さんは、
今年あたり白寿になられるような高齢のはずだが、
いまなおその詠唱ぶりは矍鑠として枯淡の響きを伝える。
この山崎門下の第一人者と目され、師の芸風をこよなく相承しているのが奥村旭翠さんであろうと、門外漢の私はみているのだが。
その奥村旭翠一門の演奏会が、明後日(20日)、国立文楽劇場の小ホールで開かれる。
入場は無料。
毎年、弥生3月のこの時期に開催されるが、
300席足らずの会場が満席になることはなく、
おさらい会のようなものだから誰でも自由に堪能できる。


この演奏会で演目の初頭に立つ末永純子は四方館の員。
彼女が奥村旭翠に師事するようになってすでに4年が経つが、
師事してまもなく出産の仕儀となり1年近くやむなく休んだとはいえ、
それでも石の上に三年の譬え、流石に初歩の粋を脱しつつあるか
詠唱も演奏も少なからずサマになりつつあるようだ。


詠ずるは「藤戸の渡し」。
おなじみ平家物語の巻十七にあるくだりで、
源平合戦記の瀬戸内児島、佐々木三郎盛綱を主人公とした藤戸の渡りの一段。
謡曲「藤戸」の世界とは趣向もまったく異なるが、
此れは此れ、愉しむべきようはそれなりにありましょう。


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