おぼつかな何に来つらむ‥‥

051023-110-1
Information<四方館Dance Cafe>

−今日の独言−
米国による「年次改革要望書

 文芸春秋の12月号に「奪われる日本」と題された関岡英之氏の小論が掲載されている。筆者は昨年文春新書「拒否できない日本」で、日米で毎年交わされてきた「年次改革要望書」に透けてみえる米国側の日本蹂躙ともいえる改造計画にスポットをあて警鐘を鳴らした人。先の郵政解散で圧勝した小泉政権は直ちにそのシナリオどおり郵政民営化法案を成立させ、今後米国の提唱するグローバルスタンダードに簡保120兆円市場を解き放っていくわけだが、次なる標的は医療保険制度であり、国民皆保険として世界に冠たる日本の健康保険制度だと警告している。小論末尾、過去11回を重ねてきた「年次改革要望書」と、その受け皿である経済財政諮問会議規制改革・民間開放推進会議が命脈を保つ限り、米国による日本改造は未来永劫進行する、と筆者は結ぶ。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<秋−40>
 おぼつかな何に来つらむ紅葉見に霧の隠さる山のふもとに  小大君

小大君集、詞書に、十月に女院の御八講ありて、菊合せさは来ければ。生没年未詳、別称を三条院女蔵人左近とされ、三条天皇(在位1011-1016)の皇太子のとき仕えた。
邦雄曰く、われながら不審なことだと、口を尖らせて自嘲するような口吻が、いかにも作者らしい。しかもなお、霧に隠されて見えない紅葉を、わざわざ見に来たのだ意地を張って、逆ねじを喰らわすような示威ぶりが小気味よい。小大君集に目白押しに並ぶ辛辣な歌のなかでも、この紅葉狩りは屈指の一首、と。


 秋の月光さやけみもみぢ葉の落つる影さへ見えわたるかな  紀貫之

後撰集、秋、詞書に、延喜の御時、秋の歌召しありければ奉りける。「光さやけみ」は、光が鮮明なので、ほどの意味。
邦雄曰く、冷え冷えと降り注ぐ晩秋の月光のなかに、漆黒の影をくっきりと見せて、一葉々々が地に消えてゆく。葉脈まで透いて見えるような、この微視的な描写に古今時代の第一人者の才が証明されよう。結句「見えわたる」の叙法も、説明に似つつ、一つの調べを創るための重要な技巧だった。冴えわたった理智の眸で秋夜絢爛の景を、くっきりと見据えたような一首、と。


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