消え侘びぬうつろふ人の‥‥

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−今日の独言− 寒さにゃ弱いのだ

 ここ数日、冬本番の寒波襲来。
外出すると冷たい風が身体を刺す。どうも夏場生れのせいか寒さには滅法弱い我が身は、寒風にさらされると途端に意気地がなくなるようだ。私の朝の日課は、4歳の幼な児を保育園に送りとどけることなのだが、つい先日までは、幼な児がそれを望むせいもあって、自転車に乗せて10分足らずの道のりを走らせていた。しかし、ここ二、三日の寒風に情けなくもギブアップ、あくまで自転車で行きたいという幼な児を宥めすかすようにして、クルマでの送りに切り替えさせてもらっている始末。
一茶の句に
  日短かやかせぐに追ひつく貧乏神
というのがあるが、寒さに震えてばかりの身には貧乏神まで寄りついてきそうな年の瀬だ。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<冬−5>
 消え侘びぬうつろふ人の秋の色に身をこがらしの森の下露  藤原定家

新古今集、恋、千五百番歌合に。
邦雄曰く、定家得意の女性転身の詠。愛人の心変わりに、身を揉み、心を焦がし、泣き暮らすその辛さ、悔しさを、木枯しの風と吹き荒れる森の景色に托して、二重写しの、複雑な心理描写を、これでもかというほどに徹底させた秀作中の秀作、と。


 置く霜は忍ぶの妻にあらねども朝(あした)わびしく消え返るらむ  祐子内親王紀伊

祐子内親王紀伊集、左京権太夫の百首の内、霜。平安後期、生没年不詳。民部大輔平経方の女というが、異説もある。後朱雀院中宮嫄子とその第一皇女祐子内親王とに仕え、中宮紀伊・一宮紀伊と呼ばれた。
邦雄曰く、隠し女は一夜を共に過ごしても、後朝の名残りを惜しむ暇さえなく姿を隠さねばならぬ。四季歌にもかかわらず、濃厚に恋の趣きでまとめたところが珍しい、と。


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