こひこひて稀にうけひく‥‥

051129-206-1
Information−Aliti Buyoh Festival 2006−

−今日の独言− 読みきらぬままに

 A.ネグリとM.ハートの前著「帝国」をまだ読みきらぬままなのだが新刊「マルチチュード」を購入。亀山郁夫の「ドストエフスキー」とともにNHKブックスとなったのは偶々のこと。中也は以前から持っているのは選集なのでこの際すでに持っている下巻に加えて全詩集で揃える。塚本邦雄全集の14巻は先月に引き続き再度の借入。「藤原俊成・藤原良経」をなんとか読んでおきたい。

今月の購入本
 A.ネグリ・M.ハート「マルチチュード <帝国>時代の戦争と民主主義 上」NHKブックス
 A.ネグリ・M.ハート「マルチチュード <帝国>時代の戦争と民主主義 下」NHKブックス
 亀山郁夫ドストエフスキー 父殺しの文学 上」NHKブックス
 亀山郁夫ドストエフスキー 父殺しの文学 下」NHKブックス
 荒俣宏「『歌枕』謎ときの旅 歌われた幻想の地へ」NHKブックス
 「中原中也全詩歌集 上」講談社・文芸文庫
図書館からの借本
 塚本邦雄塚本邦雄全集第14巻 評論Ⅶ」ゆまに書房


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<恋−10>
 振分けの髪をみじかみ青草を髪に綰くらむ妹をしそ思ふ  作者未詳
万葉集、巻十一、正(ただ)に心緒(おもい)を述ぶ。
綰く−読みはタク、(髪などを)かきあげる、たばねること。
邦雄曰く、平安朝なら「幼恋」題であろう。短く足りぬ髪を萱草の葉でも裂いて掻き上げるのか、野趣満々、東歌の夏の風俗でも見ているような気がする。まだ振分け髪の少女を描いたのは数少ない。ほほえましくあはれな一首ではある、と。


 こひこひて稀にうけひく玉章を置き失ひてまた歎くかな  源頼政
従三位頼政卿御集、恋、失返事恋。
玉章−読みはタマズサ、玉梓とも、使い・使者、転じて文章や手紙。うけひく−承くで、承知すること。
邦雄曰く、たまに貰った返書を、不注意にも紛失して、慌てふためく男の、武骨な姿とべそをかいた顔が浮かぶ破格の恋歌。初句「こひこひて」は乞ひ乞ひて−恋ひ恋ひてと裏表をなすだろう。首尾よい返事には逢うべき時も所も記してあったろうに、失ったなどと知ったらすべて水の泡だ。恋歌には稀有の諧謔が有り難い、と。


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