月やそれほの見し人の面影を‥‥

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Information−Aliti Buyoh Festival 2006−

−今日の独言− 出版100周年

 藤村の「破戒」と漱石の「坊っちゃん」はともに今年で出版100周年を迎えているそうな。
「破戒」は1906年3月に自費出版、「坊っちゃん」は同年4月、前年の「我輩は猫である」に同じくホトトギス誌上で発表されている。
その描く世界はまるで異なる対照的ともいえる作品だが、広く支持され100年の風雪を越えて読み継がれきた不滅のベストセラーという意味では双璧といえる。ちなみに新潮文庫版では「破戒」が368万部、「坊っちゃん」が382万部を数えるという。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<恋−16>
 ふりさけてみかづき見ればひとめ見し人の眉引き思ほゆるかも  大伴家持

万葉集、巻六、雑歌、初月の歌一首。
霊亀2年(716)?−延暦4年(785)。旅人の子。聖武から桓武に至る6代に仕え、従三位中納言に至る。天平の代表的歌人万葉集編纂に携わり、万葉集中最多、短歌約430首、長歌46首、旋頭歌1首。三十六歌仙
邦雄曰く、新月の優しい曲線に、かりそめに逢い見た人の黛の眉引きを連想する。冴えた美意識の生んだ抜群の秀歌の一つ。この前に叔母坂上郎女の「月立ちてただ三日月の眉根かき日長く恋ひし君に逢へるかも」が置かれて、ひとしおの眺めである、と。


 月やそれほの見し人の面影をしのびかへせば有明の空  藤原良経

六百番歌合、恋、晩恋。
邦雄曰く、軽やかな初句切れ、また歯切れよく畳みかけるような下句、あたかも今様の一節を聞く思いする愉しい恋歌。月に愛する人の面影を見る類歌数多のなかで、この一首はその嫌いなく、むしろはっとするような新味を感じさせること、千二百首中の白眉、と。


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