須磨の浦藻塩の枕とふ螢‥‥

Fumizukiten061

−表象の森− 七夕の「文月会展」

 今年も七夕の如く「文月会展」がやってきた。
すでに昨日からオープンして、9日の日曜まで。
馴染みとなっていた三条柳馬場の吉象堂から会場を移して、
 昨年からは三条木屋町の「ギャラリー中井」での開催となっている。
日本画専攻で、各々美術教育に長く携わってきた3人の仲間で出発したグループ展が
いつしか、トリオそれぞれの夫婦が共々に出品するようになって、
3組の夫婦6名のグループ展となった、変わった趣向の会だ。
私は今夜、旧い友人たちと示し合わせて、観に行くことにしている。


第20回 「文月会展」
7/5(火)〜7/10(日) 
am11:00〜pm7:00 最終日のみpm4:00迄
会場の「ギャラリー中井」へは
京都市中京区、木屋町通り三条を上がってすぐの東側。
Tell 075-211-1253


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<夏−35>
 須磨の浦藻塩の枕とふ螢仮寝の夢路侘ぶと告げこせ  藤原定家

拾遺愚草、下、夏、海辺見螢。
藻塩−海藻から採る塩、また、藻塩つくるための海水
邦雄曰く、建仁2(1202)年6月、水無瀬釣殿当座六首歌合の作。折から一方では千五百番歌合が進行中の、新古今成立を間近にした、その夏の「螢」。伊勢物語第45段の「行く螢雲の上までいぬべくは秋風吹くと雁に告げこせ」の本歌取り。これに在原行平の、さらには源氏の、須磨閑居の風情まで加味して生まれる重層効果を、篤と楽しむべき歌であろう、と。


 稲妻は照らさぬ宵もなかりけりいづらほのかに見えしかげろふ  相模

新古今集、恋五、題知らず。
いづら(何ら)−どこだ。相手を促すときの語、さあ、どうした。
邦雄曰く、恋の趣はほとんど見えぬ恋歌。「いづら・ほのかに見えしかげろふ」の陽炎が、かつて愛した人の面影、もしくは恋心の象徴となり、四季歌調の作に恋が宿る。眼の前には夜々を閃く雷光、心に顕つのは春の日の陽炎。拾遺・恋二の詠み人知らずに「夢よりもはかなきものは陽炎のほのかに見てし影にぞありける」とあるが、これならば恋だ、と。


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