友と見よ鳴尾に立てる一つ松‥‥

Titeiyose0607

−表象の森− 三枝と地底旅行寄席と大和田さん

今年も7月の地底旅行寄席は、恒例の桂三枝登場で客席も賑わうだろう。
今夜の午後6時からだ。
三枝と地底旅行寄席の所縁については以前にも書いたので省略。
この寄席を主催する旧・田中機械工場跡のレストランパブ地底旅行についても、さらに以前に書いた。
月例の寄席がすでに75回を数えるから6年余り続いたことになるが、こうして毎月のように案内と招待状を送っていただくのが、なかなか足を運べぬこの身には些か心苦しい。


60年代の労働争議、70年代の田中機械自己破産突破争議を率いた大和田幸治さんは、1926年生れというから今年は80歳になる。5年前に歴年の闘争を総括的に回顧した「企業の塀をこえて−港合同の地域闘争」(アール企画刊)を出版している。私が大和田さんの存在を知ったのは、彼が先頭に立った田中機械労働争議をモデルに描いた関西芸術座の「手のひらの詩」を観たゆえだった。関西芸術座の公演年譜によれば昭和46(1971)年9月のことになる。この芝居を通して大和田さんの為人(ひととなり)を想い描いていた私は、後年近づきになる機会を得た折り、まるで懐かしい旧知の人に会うように思えたものだった。このところ2年ばかりお目にかかることもなく打ち過ぎているが、きっと今なお矍鑠としてご健在であろう。また近い内にお元気な姿を拝せずばなるまいと思うのだが‥‥。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<雑−24>
 友と見よ鳴尾に立てる一つ松夜な夜なわれもさて過ぐる身ぞ   藤原良経

秋篠月清集、百首愚草、二夜百首、寄松恋。
邦雄曰く、古事記、倭猛の「尾張に 直に向へる 尾津の崎なる 一つ松 あせを 一つ松 人にありせば」を、秘かに踏まえた上句、下句にそのように「一夜一夜を」と歎く。「寄松恋」とあるが恋の趣はうすく、まして女人に代わっての詠とは縁が遠い。勿論「友」は「伴・同類」ょ意味するが、悽愴、凜冽の気の漂うところは、良経の特色まぎれもない秀作、と。


 ふるさとを恋ふる袂は岸近み落つる山水いつれともなし   恵慶

恵慶法師集、恋。
邦雄曰く、題の意は郷愁の強調でもあろう。落ちる涙と、岸に打ち寄せる山水と、袂を濡らすものはこもごもに、いま故郷の岸に近づく。常套と見えながら、意表を衝く趣向を秘め、作者の特徴がよく現れている。「春を浅み旅の枕に結ぶべき草葉も若き頃にもあるかな」等、家集には、折に触れて当意即妙の、淡々として味わいのある作品が見られる、と。


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