をりはへて音に鳴きくらす蝉の羽の‥‥

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−表象の森− 突出する大阪の「野球留学

夏の高校野球が甲子園で始まった。
初日第3試合、横浜と大阪桐蔭の強豪激突は桐蔭が制した。
ところで、大会前日の5日、高野連が発表したという野球留学=他府県流出組の実態調査について各紙が報道しているが、他県を圧倒して全国に球児を流出する大阪のあまりの突出ぶりには、かほどまでにかと吃驚させられた。
ちなみに、毎日新聞の伝える数字をそのまま列挙すると
流出は、①大阪409、②兵庫128、③神奈川91、④東京82、⑤京都62、以下、福岡、奈良とつづき、
流入は、①愛媛73、②東京65、③山形56、④島根55、⑤香川54、以下、岡山、静岡とつづく。
但し、この調査対象は、今大会予選出場校4112校の、あくまで登録選手のみというから、留学したもののレギュラーになれなかったベンチ外の球児たちも加えると、実際の流出入の規模はさらにぐんとひろがっていることになる。
なぜ、大阪がかくも突出して野球留学という名の他府県流出組を全国的に供給しているのか、その要因については、少年野球(中学生野球)でレベルも高く最も有力とされるボーイズリーグ(日本少年野球連盟・本部大阪市)の隆盛ぶりが大いに与っているようだ。
現在、ボーイズリーグには全国で428チームが加盟しているが、そのうち71が在阪チームだというから、高校球児たちの予備軍において、すでに大阪は全国的に突出している状況があったわけだ。
このあたり、いつ頃からかは知らぬが、積年かけてボーイズリーグの各監督たちは、自らの教え子たる野球少年たちを、檜舞台の甲子園へと導くため、野球留学=他府県流出のネットワークを全国に張り巡らせてきた、という背景が浮かび上がってくる。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<夏−41>
 をりはへて音に鳴きくらす蝉の羽の夕日も薄き衣手の杜   藤原為氏

拾遺集、夏、弘長3(1263)年、内裏の百首の歌奉りし時、杜蝉。
衣手の杜−山城国の歌枕、現・京都市西京区嵐山宮町の松尾大社の近くにあったとされるが、古来より諸説あり。
邦雄曰く、時長く鳴き続ける蝉、蝉の羽は夕陽に透きとおる。その森の名は衣手の杜、いわば袖の森。薄いのは蝉の羽であり、また黄昏に入る前の夕光。第三句以下の、あやふくきらきらしい雰囲気は、蝉の歌群中の白眉であろう。続拾遺集はこの為氏が選進した。自作選入は21首、と。


 空蝉はさもこそ鳴かめ君ならで暮るる夏ぞと誰か告げまし   壬生忠見

忠見集、納殿より夏麻たまへるに。
邦雄曰く、明日からは秋、今日で終わる夏の、その日に賜わる「夏麻(なつぞ)」、作者の胸に溢れる慕わしさが、さんさんと降る蝉の声によせて読者の胸に伝わってくる。形ばかりの、ステロタイプの贈答歌が多い古歌の中に、忠見の、この空蝉の歌に溢れる流露感は、めずらしく、かつ貴い。返歌はやや調べ低く、「唐衣着るる夏ぞと思へども秋も立つやとなどかきざらむ」、と。


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