霜の上に霰たばしるいや増しに‥‥

0505120041

−世間虚仮− 冬の嵐

「冬の嵐」だそうな。
太平洋側を北上している低気圧と日本海を北上している低気圧が北海道付近でひとつに合流、台風なみの低気圧に発達するという。

大阪でも昨夜半から間断なく強風が吹きすさぶ。夜中、配達のバイクを走らせていると突風に煽られハンドルを取られそうになるほどだ。南港へと渡る運河の橋上では横なぐりの激しい風に思わず倒れそうになった。このぶんでは自転車の場合などとても堪らないだろうと、他人事ながら心配される。これで雨混じりだと泣くに泣けない始末と相成るのだが、雨や吹雪に見舞われている地方には申し訳ないけれど、その点は不幸中の幸いだった。
それにしても先日の爆弾低気圧といい、この冬の嵐といい、暖冬異変のさなかで激しくも荒れ模様の天候つづきには、すわ異常気象かとざわめきたつのも無理はない。

そういえば、近年、「冬の嵐」が頻発しているヨーロッパでは、この気象異変と二酸化炭素の大量放出による地球温暖化との相関が伝えられている。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<冬−38>
 吹くからに身にぞ沁みける君はさはわれをや秋の木枯しの風  順徳院

拾遺集、恋四、題知らず。
邦雄曰く、秋に「飽き」の見飽いたような懸詞ながら、四季歌のさやかな調べのなかにちらりと紅涙のにじむのを見るような歌の姿が、退屈な新勅撰集恋歌群の中では十分味わうに値しよう。一首前に宮内卿の「問へかしなしぐるる袖の色に出でて人の心の秋になる身を」があり、これも面白いが、二首並べると殺しあう感あり。第四句の危うい息遣い救いあり、と。


 霜の上に霰たばしるいや増しに吾は参来む年の緒長く  大伴千室

万葉集、巻二十、少納言大伴宿禰家持の宅に賀き集ひて宴飲する歌三首。
邦雄曰く、天平勝宝6(754)年正月4日、大伴氏の郎党が年賀の挨拶に参集して、かたみに忠勤を競っている、その気息が伝わってくる。橘氏との拮抗・摩擦烈しく、ともすれば劣勢に傾こうとしていた時勢ゆえに、このような述志も、どことなく悲愴味が加わる。第一・二句の凜冽肌を引緊める天候描写こそは、おのづから大伴氏一人一人の胸中でもあったろう、と。


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