辛崎や夕波千鳥ひとつ立つ‥‥

061227003

−世間虚仮− 小沢一郎錬金術

時代錯誤もはなはだしい柳沢厚労相の失言問題で国会は大揺れ、小沢民主党は「首を取る」と勇ましいことこのうえないが、その小沢自身の足下に火がつきだしている。
ザル法政治資金規正法を悪用しているとしかいえない小沢の大胆きわまる蓄財ぶりにはまったくもって驚き入るばかりだ。
彼の資金管理団体陸山会」による経年の不動産取得は、SANKEIWEBのiZaサイトに詳しいが、
それによれば、現行のように政治家一個人につき一つの政治資金管理団体に統括限定されるように法改正のあった平成6(1994)年に、
 東京都内の土地5物件を、計2億7126万円で購入したのを皮切りに、
 平成7年には、同じく都内の1物件を、1億7000万円
 平成11年、東京都内と岩手県水沢市(現・奥州市)で2物件、6410万円
 平成13年、東京都内の2物件、4881万円
 平成15年、宮城県仙台市岩手県盛岡市の2物件、5650万円
そしてこのたび問題視された秘書宿舎だという
 平成17年、東京都世田谷区の物件、3億4264万円
全部で13件、9億5531万円となっているが、この額は土地代のみで、官報による建物代は総計5億円余となっているそうだ。

政治資金管理団体とは法人格でもなんでもないからいわば政治家の個人商店のようなものにすぎない。政治家一個人のさまざまな政治活動全般におけるカネの入と出を一元的に把握できる、いわば政治家としての財布のようなものだ。
会社でも特殊法人でもないから、政治活動のためにと不動産を取得しても、その団体名で登記そのものができない。実際、これらの不動産はすべて小沢一郎名義で登記されているという。
資金管理団体陸山会」で取得代価を払って、すべて小沢一郎名義の個人資産となってしまっている訳だが、こんな奇妙なことが法に適っているというのだから畏れ入る。
おまけに資金管理団体に出入する一切のカネは課税を免れている。パーティ収入も個人や団体からの寄付も、政党助成で分配されてくるカネも所得税の対象ではない。いわば特権的に保護された浄財なのである。
むろん、不動産を取得すれば取得税はかかるし、登記には登録税も、加えて年々の固定資産税もあるが、おそらくはこれら諸税も資金管理団体から支払われていることだろう。
それほどに、政治家個人の財布と資金管理団体の財布は、表面上は別物でありつつ、裏では一体化しうるものとなっている。
iZaサイトでも取り沙汰されているが、仮に小沢一郎が死ぬか引退するかして、彼の子どもなり身内の者が地盤看板を引き継ぐとした場合、すなわち「陸山会」をそっくり継承する場合、相続税贈与税を免れかねないのではないかと危惧されている。
小沢一郎にすれば、名義は個人であっても実質的な取得者は資金管理団体であり、所有者もまた「陸山会」であり、個人資産ではないと主張するだろう。すべては法に適っており、違法性はないと。
だが、違法云々の前に明らかにしておかなければならないことがある。
抑も、政治資金規正法がいうところの政治家一個人に一つの資金管理団体という規定は、政治家個人と団体のどちらに先験性があるのかということ、要するにニワトリが先かタマゴが先かの話だが、政治家あっての資金管理団体だということををきちんと押さえておくべきだろう。
法の理念としてそう考えるべきところだと思うが、こういった特別法は先行する実態に対して後手々々と総じて後追いで枠づけようと作られるから、矛盾やら不備やらいろいろと穴のあるものとなりがちだ。
広い意味での政治団体に包括される形で政治資金管理団体を設定し、なんの特例規定も設けなかったために本来あるべき先験性は逆転し、団体の代表権の移譲や継承が当然起こり得るものとなってしまう。そこに小沢のつけ込むスキがあったのだし、とんでもない錬金術を生み出す元凶となっている訳だ。
自民党の中川幹事長が言うとおり、政治資金規正法は、資金管理団体が不動産を購入取得するなどという経済行為を想定していなかったのだろうが、たとえば、ある個人が土地なり建物なりを政治活動に使用してくださいと寄付する場合もあり得ない訳ではない。この場合、資金管理団体は贈与を受けたとして課税されないことになるのだが、だからといって引退した折にはその不動産が政治家個人の資産へと横すべりしてしまってはとんでもない話だろう。資金管理団体が管理し、政治活動に供与しているかぎりにおいて贈与とみなさない特権のうちにあるとしても、個人の所有となる時点においてはその特権が消滅しなければならないだろう。
小沢一郎の政治資金管理団体陸山会」はいつに政治家小沢一郎個人に帰属しているとみるべきなのだ。
政治資金管理団体の継承や譲渡などありえない、あってはならないのだ。小沢一郎個人は政治活動を離れて独り歩きをすることがあっても、「陸山会」が小沢一郎を離れて独り歩きなどできはしないということが、政治資金規正法のあるべき姿だったはずだが、現実の法はそこに歯止めがかからない。
冒頭に挙げたような、小沢一郎の政治資金管理団体陸山会」による多数の不動産取得は、それらが小沢一郎名義で登記された時点で、その取得費用いっさいを小沢一郎の個人所得とみなし、国税庁所得税等の課税をすべきだと私は考えるが、どうやら国税庁は小沢サイドの法の不備を突く詐術的論理に嵌ってか課税しないまま捨て置かれてきているようだ。
たとえ領収証がの記名が「陸山会」になっていようと、小沢一郎名義の登記となっている以上、小沢個人が資産買いをしたのだ。小沢が政治資金を着服したとまで言わないが、ちゃっかり借用して純粋に経済行為をしたのだから、個人所得とみなせばいい。その不動産を秘書たちの寮として使用しているなら、小沢個人の財産をおのれの資金管理団体へと無償供与しているにすぎないし、自身の政治活動のための供与など至極当然のことだろう。
かりに賃料を稼ぎたいなら、この場合資金管理団体とではなく、あくまで秘書ひとりひとりと賃貸借契約をすればよいことだ、と私は思うのだが‥‥。
いまさら国税庁が重い腰をあげたところで、税法の時効は、通常は3年、悪質な脱税とされた場合でも7年である。法解釈上の認識の違いというレベルで争点になろうから、悪質とされる可能性は低いように思われる。とすれば全13物件のうち、平成15年分と17年分を除いた10件がすでに時効となってしまうことになる。
まことに露骨で恥知らずな小沢一郎錬金術というべきか。

 ―――参照サイト「SANKEIWEB−iZa」   
 http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/108379/

<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<冬−49>
 三島野に鳥踏み立てて合せやる真白の鷹の鈴もゆららに  顕昭

千五百番歌合、千二十番、冬三。
邦雄曰く、歌合せ歌の題を見事に活写したのは、一に「鳥踏み立てて」と「鈴もゆららに」あたりの、弾んだ語調によるものであろう。六条家を代表する論客だが、歌ははなはだ佳品に乏しく、この歌は出色の一首。右は俊成女の「山里の真柴の煙かすかにてたたぬも寂し雪の夕暮」で、この作者にも似合わず凡調、季経の判は持であるが、明らかに左歌の勝ち、と。

 辛崎や夕波千鳥ひとつ立つ洲崎の松も友なしにして  心敬

権大僧正心敬集、百首、冬十首、湖上千鳥。
邦雄曰く、人麿の夕波千鳥と古事記・倭建の尾津の崎の一つ松の歌を、功みに折衷したような作品。松は、あるいは後京極良経・二夜百首の「友と見よ鳴尾に立てる一つ松」を意識したかのも知れない。千鳥もはぐれてただの一羽、松も一本松、互に孤をかこちつつ呼び合う。和歌と連歌の微妙な関連と背反が、この一首にも感じられる。下句は脇の風情、と。

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