志賀の浦や波もこほると水鳥の‥‥

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−四方のたより− 市岡OB美術展

またもや失態の巻を演じてしまった。
性懲りもなく2年前の搬入時と同じ失態を繰り返してしまったのだから、まことに情けないこと夥しい。
今年で早くも8回目となる筈のこの展覧会、当初、日曜日だった搬入・搬出が、一昨年から土曜日に変わっていたのだが、刷り込みが強すぎるのか、単なるうっかり病か、今年も日曜日の搬入とばかり思い込んで、土曜の夜は、後から舞いこんできた15期会の新年会へと参じ、美術展の関係各位には大迷惑をかけてしまった。
そんなわけで、せっかく特別展示の配慮を頂いて、昨年12月急逝した中原喜郎さんの作品を、私所有の4点から2点を選んでの搬入は、昨日、稽古を終えてから、まだしばらくは左肩の故障で三角巾で腕を吊った身では運搬もままならず、連れ合いに持たせて幼な児ともどもの家族連れの地下鉄移動で、ゆるゆるとお出かけモード。
現代画廊へと着いたのはすでに夕刻、画廊に居合わせたみなさんにお手を煩わせて、一日遅れの展示もなんとか無事相成った。

教員だった梶野さんと栄さんはじめ、12期の辻絋一郎さんから25期の小倉さんまで、今年の出品者は総勢24名。
初参加の中務(13期)さんの、一瞬を捉えて永劫の時間を湛える写真が眼を惹くが、これまで欠かしたことのない村上(17期)君の静謐な工芸品が見えないのは少し淋しい。
梶野作品の画題「逆天の祈り」や遠田(13期)さんの作品「彼の戻る日」、さらには18期の神谷君、その画題は「レクイエムⅠ.Ⅱ」などに、中原喜郎氏急逝の悲報の影が覗えるような感あり。
それぞれ個有の形象に深まりを見せていく、松石(20期)君の「虚ろな時刻」、小倉(25期)さんの「猫のいる風景Ⅱ」。
バラエティに富んだ出品作のなかに、小浜(18期)さんのガラス器が花を添えるのもたのしく、遊び精神彷彿の宇座(17期)君の「奴凧」は、その自由な境地がうれしくかつ頼もしい。

<2007市岡高校OB美術展>
北区西天満の老松通り、現代画廊・現代クラフトギャラリーにて今週開催中。
2月18日(日)〜24日(土)の、午前11時から午後7時まで。但し最終の土曜はPM5時まで。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<冬−55>
 志賀の浦や波もこほると水鳥のせかるる月による力やなき  木下長嘯子

挙白集、冬、月前水鳥。
邦雄曰く、堰かれつつ急かれて、結氷寸前の水上の月はしづ心なく、見えみ見えずみ、水鳥の寄る辺もあらばこそ。長嘯子の複雑な修辞はその心理を叙景に絡ませ、景色を心象に写し、一風も二風も変わった冬歌を創り上げた。「寒夜水鳥」の題では、「打ち払ふ鴛鴦の浮寝のささら波まなくも夜半に霜や置くらむ」と、さらに錯雑した妖艶な風趣を繰りひろげる、と。


 暮れやらぬ庭の光は雪にして奥暗くなる埋み火のもと  花園院

風雅集、冬、冬夕の心をよませ給ひける。
邦雄曰く、六百番歌合の「余寒」に定家の「霞みあへずなほ降る雪に空閉ぢて春ものふかき埋み火のもと」あり、風雅・春上に入選、同じ集の冬のこの本歌取りを見るのも奥深い。薄墨色と黛色で丹念に仕上げた絵のように、じっと見つめていると惻々と迫るもののある歌だ。第三句「雪にして」のことわりも決して煩くはない。第四句の微妙な用法も効あり、と。


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