さかづきに春の涙をそそぎける‥‥

061227_051


Information<連句的宇宙by四方館>

Information<うしろすがたの−山頭火>

−世間虚仮− 選挙の収支報告

選挙の収支報告をひとまず終えてほっと一息である。
選挙運動における収支報告書は、投票日から15日以内に当該の選挙管理委員会に提出しなければならないと公職選挙法で定められているが、この出納責任者に課された収支報告は、政治資金規正法の定める政治団体におけるそれとは厳密さの点において天地ほどの隔たりがあり大きく異なっている。
その最たるものが、支出における領収書(写しでよい)の添付義務。
政治団体は5万円以上の支出に限り添付義務となるが、人件費を除く経常経費支出−事務所費や水道光熱費、備品消耗品費など−に至っては、その内訳や領収書添付さえ免れているから、昨今国会を賑わす松岡農相問題に象徴されるズサンで野放図きわまりない収支報告のオンパレードと相成り、カネの流れは藪の中、政治家達の一挙手一投足を黒幕の向こうに隠してしまう。
選挙における収支報告は、いっさいの支出の内訳と領収書の添付が課されている。かりに領収書が徴し難かった場合には、個々それらの理由を記載することも課されている。
寄附などの収入においては、1万円を超えるものはすべてその詳細を明らかにしなければならない。年に一度の政治団体の場合は、これまた5万円以上とされ、多くの寄付行為が闇の中に隠されることとなる。
それにしても、一切の支出を領収書を添付した上、その内訳を支出先の氏名(社名)及び住所とともに記載せよとは、作業としてはなかなか厄介なもので、おまけにその書式が会社や個人商店の帳簿方式なら、いまどき会計ソフトで伝票入力さえすれば、複式簿記の帳簿一切ができあがるが、こちらは旧態依然たる書式を踏襲しているため、いちいち詳細を手書きで記帳していかなければならない。ボールペンを運ばせる手指の硬直に一息入れるたび、これほど馬鹿げたこともあるまいにと溜息も出る仕儀となる。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春−69>
 あだにやは麓の庵にながむべき花より出づる峯の月影  源通光

新続古今集、春下、千五百番歌合に。
邦雄曰く、歌合せの春三で番は隆信の柳の歌であり、俊成の判は通光の勝。健久の政変の奸雄通親の息、新古今選者道具の弟で、この歌合せ当時弱冠15歳、出場者中最年少。新古今入集14首は抜群の才による。第四句の「花より出づる」水際だった修辞で、13世紀初頭の最新の技巧だ。その早熟の詞華は兄を遙かに越え、宮内卿の兄弟版を連想させる、と。


 さかづきに春の涙をそそぎける昔に似たる旅のまとゐに  式子内親王

萱齋院御集、前小斎院御百首(百首歌第一)、雑。
邦雄曰く、旅の宿での団欒に、そのかみの日の、同じような旅を思い出て、交わす盃に落涙するという。春愁の主題を羈旅に即して、侘しくかつ華やかな独特の調べを創った。「春の涙」とは、当時、大胆新奇な歌言葉であったはず。深窓の貴婦人の孤独な詠唱とはいえ、御集にははっとするような鮮麗、奔放な幻像と修辞が鏤められている。勅撰集には未載、と。


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