涙さへたぎりて落つる夏の夜の‥‥

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−世間虚仮− 失言居士の生かじり知識

失言居士・久間章生防衛大臣の、米国による原爆投下は「しようがない」発言があったのは6月30日だったが、ヒロシマナガサキ原爆の日も近いこの時期、しかも安倍政権の命運がかかった参院選挙を控えていることも重なって、失言騒動の波紋は大きくひろがっている。
毎日新聞の朝刊で、昭和史に詳しい作家の半藤一利が「久間防衛相は歴史を生かじり」と一刀両断に斬り捨てている。
氏曰く、久間防衛相は、日本を降伏させるために、米国とソ連が競ったと考えているようだが、1945年2月のヤルタ会談で、ドイツ降伏の3ヶ月後にはソ連が参戦することに、米国は合意しており、
また、米国の原爆投下は、同じ7月のポツダム宣言による降伏勧告の前に、すでに命令が下されていた。
日本の政府首脳は原爆投下の前から、戦争を終結しようという方向で動いていたし、米国もソ連もそれを承知していたのも事実。
日本を早く降伏させるために原爆を落とした、というのは米国のあとからつけた勝手な理屈というわけだ。日本の防衛相がこれを代弁するなど、そんな必要はなく、もっての外と騒がれても致し方あるまい。
失言直後の安倍総理の反応の鈍さを思えば、久間防衛相にかぎらず、安倍総理以下、いまの閣僚たちの多くも、きっとこの程度の生かじりの歴史知識で、国政の舵取りをしているのだろう。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<恋−60>
 涙さへたぎりて落つる夏の夜の恋こそ醒むる方なかりけれ  二条太皇太后大弐

大弍集、人の恋ひしに、夏の恋の心。
生没年未詳、太宰大弐藤原道宗の女か、母は大弐三位ともいわれる。金葉集初出、勅撰集に19首。
邦雄曰く、夏の夜の恋といえば蛍や蚊遣火が景物となって、情緒一入が常道であるが、大弐の場合は滂沱たる涙の滝、手を尽くす術もなく、恋醒めなど考えられぬ。第一・二句の強勢表現、やや過ぎるかと思われるくらいだが、情熱のたぎり、珍しく線の太い相聞歌となった。二十一代集に洩れたのが不思議なほど、強く高い響きをもつ歌である、と。


 わが恋はむなしき空に満ちぬらし思ひやれども行く方もなし  よみ人知らず

古今集、恋一、題知らず。
邦雄曰く、恋一の巻首・巻軸は勿論、巻中の8割以上を埋めつくすよみ人知らず歌は、いずれ劣らぬ美しい調べであり、後の世の本歌としてももて囃されてきた。虚空に満つる恋、はるばるとして際限もないもの思い、いずれ遂げ得ぬ恋のことながら、この歌には深刻な慨嘆、懊悩などはほとんど感じられない。虚空、むなしき空の縹の色の澄んだ悲しみである、と。


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