夕暮れは雲のはたてにものぞ思ふ‥‥

Alti200409

−世間虚仮− 地方議員164名の駆け込み辞職

今年の4月1日には「改正地方公務員等共済組合法」が施行されているが、これに伴い全国の都道府県議・市議・区議等の議員年金も給付水準が12.5%引き下げられることになったわけだが、こりゃかなわんとばかり臆面もなくちゃつかりと、施行前の3月末に駆け込み辞職をした議員先生たちが少なくとも164名を数えたと報道されていた。
町村を除いた地方議員だから、この分母は最大2万4000人ほどになり、わずか1%にも満たない数値だが、3期12年の年金受給資格者に限られるから、分母はぐんと小さくなるだろう。とはいうものの2桁の大台に乗るはずもなく数パーセントにすぎないと思われようから、さほど驚くにあたらないと見えるかもしれないが、よほどの不始末でもしでかさないかぎり任期途中で自ら辞任などしないお歴々のことなれば、164名というこの数字は充分に事件性はあるといっていいだろう。
5000万件以上の主不明の年金騒動で上や下への当節にこの報道、まるで出来すぎの諷刺漫画みたいだが、とても笑ってすませるものではない。


ところで、わが国と世界各国の地方議会制度を比較、わかりやすく数値で対照した一覧を、「構想日本」なる団体がネットに公開しているが、わが国の地方議会・議員事情の突出した特異性が如実に示されている。
嘗て私が見聞したオーストラリアも、デンマークやスエーデンなどの北欧においても、地方議員とはみな専門職などではなくボランティアであった。したがって議会も夜に行われるというのが通例であった。
上は国政を与る衆参議員から末端自治体の市区町村議員まで、ひとしなみに専門化・職業化している地方議会・議員制度は、ひとりこの国だけなのだ。
些か論理は飛躍するようだが、特権化した議員集団をあまねく末端にまで肥大させたがゆえに、これにおもねるあまりか、却って自治体サイドの情報公開をずいぶんと遅らせてきたのではないかと、私などには思われるのだ。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<恋−64>
 つれづれと空ぞ見らるる思ふ人天降り来むものならなくに  和泉式部

玉葉集、恋二、百首歌の中に。
邦雄曰く、天来の愛人を待つ心、「天降り来むものならなくに」と自ら否みながらも、他の頼む術もないままにまた天を望む。二句切れの思いあぐねたような構成も、無造作に見える下句も、累計的な王朝和歌の中では、新しくかつ別趣のあはれを創っている。数世紀にわたって数多の本歌取りあり。この秀作、第十四代集に至るまで選外に置かれた、と。


 夕暮れは雲のはたてにものぞ思ふ天つ空なる人を恋ふとて  よみびと知らず

邦雄曰く、華やかに遙かな恋歌の源泉にして原型とも言うべき一首。日没の山などに、光の筋の立ち昇るように見える雲を、雲の旗手と呼ぶ。万葉の「わたつみの豊旗雲に入り日見し」も同趣の光景。前掲の和泉式部の「つれづれと空ぞ見らるる」も、この歌の心を写したもの。下句の匂い立つような情感は、後の世のあらゆる相聞の、技巧の粋すら及ばない、と。


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