人知れず逢ふを待つ間に恋ひ死なば‥‥

Alti200419

−世間虚仮− 進学校と優秀生徒の「名義貸し」

予備校にしろ私立の進学校にしろ、少子化の進行で生徒確保のしのぎを削る競争はよほど深刻化しつつあるのだろうが、「関関同立73人合格、実は1人」と、有名大学への合格実績がこんな形で大量に水増しされていたとは、驚き入って開いた口がふさがらない。これでは公共事業の入札・請負などによく問題となる「名義貸し」とまったく同じではないか。
昨日付の読売新聞の報道では、大阪市住吉区の私立学芸高校の学力優秀な一人の生徒に、学校側が受験料を全額負担し、06年度の有名私立関関同立の全73学部・学科にすべて出願させていたというのだ。といっても、センター試験の結果のみで合否判定をする制度を利用してのものだから、この生徒がいちいち実際に受験する必要はないわけで、謂わば生徒の名義貸し、学校側からいえば名義借りということだ。結果はすべて合格で、受験費用は計130万円也。さらにこの生徒側には5万円也と数万円相当の腕時計を贈答していたというから、畏れ入谷の鬼子母神。この生徒は国公立が第一志望で、実際はこれに合格し進学したらしい。
この学校では5年前から、関関同立などを受験する生徒の受験料を負担する制度を設けており、規定は非公開で一部生徒だけに告げられる、とも報じられている。
優秀な生徒の名義借りが常習化しており、この水増し合格で進学校としての偽装を図ってきたわけだが、これも氷山の一角、決してこの高校だけではないだろう。新興の進学校はおそらく大同小異だろうし、老舗の有名進学校だって、いくらか疑ってかかる必要があるかも。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<恋−75>
 うつつこそ寝る宵々も難からめそをだにゆるせ夢の関守  後鳥羽院

拾遺集、恋二、千五百番歌合に。
邦雄曰く、四句切れ命令形「そをだにゆるせ」がまさに帝王調、悠々としてしかも情趣に富む。歌合では、右が定家の「思ひ出でよ誰がきぬぎぬの暁もわがまたしのぶ月ぞ見ゆらむ」。顕昭判は当然表敬の意も込めて左勝だが、実質は力倆まさに伯仲した「良き持」の番。院の剛直な急調子も快く、定家の凄艶な言葉の響きと彩も、いつもながら圧倒的である、と。


 人知れず逢ふを待つ間に恋ひ死なば何に代へたる命とかいはむ  平兼盛

拾遺集、恋一、題知らず。
邦雄曰く、恋に生きるこの命、それも逢い、契ってこその命、未だ逢うこともなく、秘かに思い続けて、機を待つばかりで、その間に焦れ死んでしまったらなんの甲斐があろう。命に代えて必ず逢おう。一筋の恋心、それも男心が、切々と歌われ、殊に結句の「命とかいはむ」には涙をこらえた響きさえ籠っている。恋の真情、真理を伝えた稀なる一首である。


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