秋風に山吹の瀬のなるなべに‥‥

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−世間虚仮− 安部首相脱税疑惑と独裁者たちの闇の財産

突然の辞任劇で敵前逃亡、今も慶応病院に入院したままの安部首相の相続税脱税疑惑は、グレーゾーンとはいえどうやら黒とは断じきれぬもののようだ。
直かに週刊現代の当該記事にあたったわけではないがその要約されているところをみると、父晋太郎が存命中に多額の資金を自分の政治団体に寄付献金していた。おそらくはこの折り晋太郎はその金額をそっくりそのまま寄付金控除を受けているだろうから大変な節税行為とはなるが(以前はそんなトンデモハップンが罷り通っていたのだ)、当時の政治資金規正法では政治家個人に資金管理団体が一つでなければならない現行法とは異なり、これを脱税行為とするに至らないのだろう。
晋三が父晋太郎の死後、その潤沢な資金を有する政治団体をそのまま継承したということならば、これを相続行為と見做し、課税対象とするのは当時としては法的に無理があったろう。
現行法における資金管理団体とは政治家個人の政治活動のための唯一の財布であり、金の入と出が一目瞭然となることを本旨としており、晋太郎の行ったこんな人を喰ったような脱税にも等しい行為は出来なくなっているから、現行法に照らして道義的責任は云々出来てもいまさら脱税行為と極めつけるわけにはいくまい。


ところで18日付夕刊の小さな囲み記事に眼を惹く話があった。
発展途上国における嘗ての独裁者たちが多額の不正蓄財をスイス銀行など国外の金融機関に貯め込んでいるのは北朝鮮金正日を惹くまでもなく広く知られるところだが、世界銀行(WB)と国連機関の薬物犯罪事務所(UNODC)が連携して、これらの資産を取り戻し各々の国の開発資金として役立てようと、「盗まれた資産回復作戦」を着手するというもの。
世界銀行が推計する彼ら独裁者たちの汚職などによる蓄財の額はわれら庶民感覚の想像をはるかに超え出ているものだ。曰く、インドネシアスハルト元大統領は150億〜350億㌦、フィリピンのマルコス元大統領は50億〜100億㌦、ザイール(現コンゴ)のモブツ元大統領は50億㌦などその巨額に驚かされる。ペルーのフジモリ元大統領も6億㌦とその名を挙げられている。
水は低きに流れるが、とかく金や財は高きに流れるもの。
世の権力者たちに巣くう闇の蓄財はまだまだ氷山の一角なのだろうが、世銀や国連によるこのUターン作戦が、悪銭身につかずとばかり洗浄され低きに流れるがごとく、大いに実効を結ぶとすれば時勢もずいぶん変わってきたものだと思わされるニュースではある。


<歌詠みの世界−「清唱千首」塚本邦雄選より>

<秋−114>
 秋風に山吹の瀬のなるなべに天雲翔ける雁に逢ふかも  柿本人麿

万葉集、巻九、雑歌、宇治川にして作る歌二首。
邦雄曰く、「金風 山吹瀬乃 響苗 天雲翔 雁相鴨」、清麗なこと目をそばだてるばかり。「山吹の瀬」は所在不明だが、詞書によるなら宇治のあたりであろう。前一首は「巨椋の入江響むなり射目人の伏見が田井に雁渡るらし」。「射目人(いぬひと)」は狩のとき遮蔽物に隠れる射手、「伏見」の枕詞、いずれも強い響きが、凛々と秋気を伝えるような作、と。


 夕まぐれ山もと暗き霧の上に声立てて来る秋の初雁  北条貞時

続後拾遺集、秋上、題知らず。
文永8(1271)年−延慶4(1311)年、執権時宗の嫡男、母は安達義景女、高時の父。時宗早世て14歳で執権に。和歌を好み鎌倉在の冷泉為相・為守らと親交。出家して最勝国寺殿と称された。
邦雄曰く、来る雁も中空の声を歌うばかりではなく、14世紀初頭には「山もと暗き霧の上に」と、特殊な環境を創り出して、新味を持たせようとする。鎌倉武士、それも最明寺入道時頼の孫、元寇の英傑相模太郎時宗の長子である作者のこの風流は特筆に値する。勅撰入集25首、政村の40首、宣時の38首、宗宣の27首に次ぎ泰時を越える、と。


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