一ふき風の木の葉しづまる

Artcort

―四方のたより― お誘い色々

6月は意外に舞台やイベントの案内が多く寄せられてくる。
劇団大坂は、今日が初日で、熊本一演出の「月の砂漠」を劇団稽古場でもある谷町劇場で、今週末と来週末、いずれも金・土・日と行う。本拠での熊本演出は「時の物置」以来の1年半ぶりだという。

市岡OB美術展にめずらしく出品していなかった栄利秋さん、どうしていらっしゃるかと気にかけていたら、「OAP彫刻の小径2008」なるご案内をいただいた。「空と風と水と」をテーマに現代彫刻家8人が新作を競う野外彫刻展は、すでにこの4月から天満橋大川沿いの大坂アメニティパークで展示-09年3月迄-されているが、この10日から21日迄は場所を室内-アートコートギャラリー-に移しての展覧会となる。

舞踊の山田いづみは、島之内のWFでSolo Danceを、こちらも来週末の13-金-.14-土-.15-日-だ。

いつも案内をいただいては欠礼ばかりが続いているキタモトマサヤの「遊劇体」は、このところずっと泉鏡花の劇世界に挑んでいる。これまでに「紅玉」、「天守物語」、「夜叉ヶ池」を採り上げ、今度は「山吹」を舞台に。月末の26日-木-〜30日-月-まで、場所はミナミの精華小劇場。

在阪の邦・洋文化団体が大同して艶を競う大文連主催の恒例アートフェスティバルは、28-土-.29-日-の両日、場所は吹田のメイシアター、大・中・小のホールから展示室や集会室も使ってとりどり盛り沢山の催し。

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>


「鳶の羽の巻」−02

  鳶の羽も刷ぬはつしぐれ  

   一ふき風の木の葉しづまる  芭蕉

次男曰く、「綴れ紙子に紙頭巾、取りさがしたる姿にて、さながら鳶が身振ひして、風に吹かれし如くなり」、仮名草子「竹斎」に見える描写である。鷹は直飛して空中で獲物を捕えるが、鳶は上昇気流に乗って帆翔し食は地上に求める習性があるから、浮力を得るために羽毛は長短不揃いで婆娑としている。風に吹かれれば猶のこと乱れる。

「一ふき、風の木の葉しづまる」-一吹き風ではない-とはそこに目を付けた、つまり鳶の羽を突風で煽っておいて、しかるのちに初時雨に整えさせる、と趣向を立てた打添の景色作りである。

季語は「木の葉」、連・俳で初兼三冬として扱い、枝に残ったままの枯葉る含めて遣うことばだが、「拾遺集」-勅撰第三集-までは冬歌に取合せた例はまだ見当らぬ。木の葉散る、−降る、などが秋よりもむしろ冬に相応しいものとして遣われるようになるのは「新古今」前後からで、これは山家思想の流行と関係がある。

句の「しづまる」木の葉は、立木のままの枯葉でも落葉でもよいが、前者なら戦慄のあと、後者なら乱舞のあと、相反する心象を以て打添うことになる。

「三冊子」は脇句と発句を因果関係と-逆付-と考えて、「木の葉の句は、発句の前をいふ句也。脇に一嵐落葉を乱し、納りて後の鳶のけしきと見込みて、発句の前をいふ也」と説いているが、これは見当が違う。逆付は句はこびに間々見られる便法だが、一巻の初に当って、亭主-脇-が客-発句-の言葉の絵解から入るようでは挨拶にもならぬ。先が思いやられる。第一、鳶の羽の普段の状態が土芳にはよく解っていないようだ、と。


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