我月出よ身はおぼろなる

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INFORMATION
林田鉄のひとり語り「うしろすがたの山頭火」

―四方のたより― うれしい便り -2-

山頭火」公演案内にともない、ちょっぴりうれしい便りがつづく。

「うしろすがたの山頭火」−今回はどういう訳か、すぐに観てみたいと思いました。
かつての演劇仲間にも声をかけました。30日に行かせてもらいます。
林田さんの文章はいつも読みごたえがありますね。9月、悲しい事に出会われたこと、どのように言ってよいのか、お察し致します。「Soulful days」すばらしい詞ですね。
あなたの”才能”をよく分かりもせず、いつぞやは電話で言いたい放題、失礼致しました。
お身体大切に、これからもご活躍下さいませ。
11月の撮影会は23〜24日とN邸で一泊です!!  −K.K

−K.Kは高校同期の女性、退職後はもっぱら風景写真に凝り、良いショットを求めてはあちこち出かけてゆく日々、独り身の余生を謳歌している。

お久しぶりです。冬が近づいて来ましたね。
当方、この10月31日が還暦で東洋紡を退職しました。
辞めたい、辞めたいと思いながらついに定年まで勤めましたがこれですっきりしました。
精神的自由を感じています。
しかし、自由からの逃走という言葉もあるように、人間は自由であることにも耐えられない存在かもしれませんね。そのことは、大学を自主留年したとき実感しましたが、まだ2週間たらずではそれはなく、うれしい感じです。
生活のお金もまだ当分必要ですし・・・。
30日の公演に行かせて頂く予定をしています。 −K.M

−K.Mは昔々の劇仲間。九州の福岡だったか佐賀だったかの出身で実家は寺、僧になるのを嫌ってか大手商社マンに。この10月末めでたく退職を迎えたという。

ご無沙汰です。今回はご案内ありがとうございます。
円熟の山頭火、ぜひ観に参ります。 −T君

−T君のこの短文は携帯メールから。なにかと多忙な人ゆえこれまで観る機会を得なかった。

以前から、ずっと拝見したいと思っていました。
うまいぐらいに、そのころなら都合がつきそうです。
HPから予約メールを入れさせていただこうかと思いましたが、何分、突然あらぬ方向に引っ張られることもある身。かえって予約をしてはご迷惑かと当日の客ということでよろしくお願いいたします。
2名で伺います(だれと行くかは未定です)。 −Sさん

−SさんはPCメールからの便り。市岡高校の同窓会メール「芋づる」メンバーである。

林田先輩の公演、
自転車で行けるし、興味あるし、見に行こうかな。
29日は現場仕事で、17時帰宅は難しいから、行くとしても30日。
でも、29日に現場仕事が終らなければ、30日に食い込むし、ごてる可能性あるから、さんの先輩と同じで、当日の客と言うことでよろしく〜! −I君

−I君も、Sさん同様「芋づる」メンバーでPCメール。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「霜月の巻」−16

  江を近く独楽庵と世を捨て  

   我月出よ身はおぼろなる  杜国

次男曰く、初裏の月は八句目に扱っている例が多く、一往定座とみなす-この巻では芭蕉に当る-。

二句こぼして春の月に作り、花の定座の前としている。「麻かり」の句案に月など持込む隙はなさそうだから成行上そうなったとも考えられるが、月花を並べて趣向とする狙もあるだろう。

貞徳の俳諧式目「御傘-ごさん-」-慶安4年刊-に、「おぼろげ、と云詞春にあらず、月を結ては春たるべし」とあり、其後江戸中期になつて初朧・朧影などを朧月の傍題とする作法書は現れるが、朧とだけでは雑の詞と考える解釈の伝統は江戸時代を通じて変らなかつたようだ。尤も句例は元禄頃から散見する。その多くは、取合せて春季とするか、全体の仕立が朧夜を感じとらせる底の句である。現代の歳時記は「朧」を春の季とする。

月の座の「独楽」とは「我月出よ」だという見定めはあたりまえのようだが、これは月から季節の属性を抜いて心月とするうまい工夫だ。さらに、身の「おぼろ」ゆえだと告げられると、「我月出よ」を「独楽」の見合とした狙はもしや西行にあやかりたい離俗の工夫ではないか、と気付く。

「ひとり住む庵に月のさしこずば何か山辺の友にならまし」-山家集-
「嘆けとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな」-千載集、百人一首-
「雲はれて身にうれへなき人のみぞさやかに月のかげは見るべき」-山家集-

余人ならいざ知らずこれはそのまま杜国の心でもあつたろう。「野ざらし紀行」には、わざわざ「杜国におくる」とことわって、「白げしにはねもぐ蝶の形見哉」の一句を収める。貞享2年4月初ごろには既に罪状の取調べが始まつていたらしいとわかる詠みぶりだが、「冬の日」の興行当時、悲運の予感、身の潔白を証したい願はあったのではないか、と。


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