文書くほどの力さへなき

Dancecafe080928193

Information−四方館 DANCE CAFE –「Reding –赤する-」

―表象の森― F.ヴァレラ「身体化された心」より

・色視覚の次元性

われわれ人間の視覚は「三色性」である。その視覚システムは三つの色チャンネルへ交差結合される三種の光受容体から成っている。

もちろん三色性は人間固有のものではない。むしろほとんどすべての動物群に三色性をもつ種がいる。だが、興味深いことは、「二色性」や「四色性」を有する動物群もあり、さらには「五色性」の可能性のある動物もいるとされていることだ。
二色性には、リス、兎、ツバイ、ある種の魚、おそらくは猫、ある種の新世界猿が、四色性には、金魚のように水面近くで生きる魚、ハトやカモのような昼行性の鳥などだが、昼行性の鳥においては五色性の可能性もあるというのだ。

われわれ人間の視覚が三次元であるように、二色性の視覚を表すには二次元、四色性には四次元、五色性には五次元が必要となるわけだが、その基礎となる神経系の作用はわれわれのそれとはまったく異なるものにちがいない。
仮に、四色性=四次元の色視覚を、われわれ三次元の視覚に時間次元を有したものと想像してみるなら、色は四番目の次元値に応じて異なった度合で点滅するといったことが起こり、たとえば「速い−赤」とか「遅い−赤」といわねばならないようなことになるだろう。

このような動物界の多様な色視覚の存在は、鳥、魚、昆虫、霊長類の非常に異なる構造的カップリングの歴史によって、それぞれ異なった知覚される色の世界を創出してきたものと見るべきだろう。
したがって、われわれ人間の知覚する色世界が、けっして進化論的な最適の適応と見なしてはならないわけである。われわれの有する色世界は、生きている存在の進化論的な歴史のなかで実現された、一つの存続可能な系統発生的な経路の成果にすぎないのだ。


認知科学におけるenactive approach-行動化アブローチ-

Q. 認知とは何か?
A. 行為からの産出-enaction-。世界を創出する構造的カップリングの歴史である。

Q. それはどう機能するのか?
A. 相互連絡した感覚運動サブネットワークの多重レベルからなるネットワークを介して。

Q. 認知システムが十分機能しているときをどうやって知るのか?
A. あらゆる種の若い生物のように進行中の存在世界の一部になるときか、進化の歴史で起こるように新しい世界が形成されるとき。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「花見の巻」−20

  何よりも蝶の現ぞあはれなる  

   文書くほどの力さへなき  珍碩

次男曰く、恋句に奪って二ノ折入の展開としている。

余情を汲んだ遣句体ながら、このはこびのよろしさは、既に芭蕉の句作りが期待した筈のものである。人物はひとまず女と見たくなるが、そうと限ったわけではない、と。

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