花薄あまりまねけばうら枯て

Dancecafe08092887

Information−四方館 DANCE CAFE –「Reding –赤する-」

―世間虚仮― Soulful Days-20- Drive Recorder

昨日の午後、事故時の記録画像を、やっと見ることができた。
MKタクシーのK氏やT氏を煩わして2.3週間前から要請していたことだが、ご丁重にもT氏自らの送迎付で大正営業所内の応接室にて、ドライブ・レコーダーに記録されていたという事故時の画像、それは衝突の瞬間に前後するほんの数秒間の記録なのだが、件のビデオと対面したのである。

画像は、RYOUKOを乗せたM氏運転の車が辰巳橋南交差点へ右折しようと進入するあたりから、対向車線を走行してきたT運転の相手車と衝突した直後まで、6.7秒程度のもの。
その短いビデオ画像を何度も繰り返し見た。徐行速度がコンマ秒でわずかに揺れ動くのを、コマ送りで何度も行きつ戻りつしては、克明に脳裏に焼付け、またメモもしてみた。

車は阪神高速の16号大阪港線の高架下を9.8km/hでゆっくりと右折途中、対向車線を走ってきた1台の軽自動車を見送っているのが判る。その軽自動車通過直後から衝突の瞬間まで3.8秒、高架下側道の右折車線に車の先端がかかりだしたかと見られる時点からなら2.44秒程かと推定される。
車は右折して直進横断行為になるあたりから徐々に加速していき、コンマ秒単位で12.7km/h、16.9km/h、21.1km/hを示すが、衝突時より0.5秒直前にほぼ停止状態-5.6km/h-となる。

このことは相手方が供述しているとされる「右折車が横断途中に突然停車した」というものとたしかに符合する。
だが、この主張が矛盾なく成り立つのは事故時から遡って1.0秒乃至1.1秒というほんの短い時間だけのことだ。少なくともその数秒以前、2.7から3.0秒程は右折しようとしている車のヘッドライトが交差点路面を照らしつづけているのだが、相手方はどの時点で右折車の存在に気がついたのか、それが問題だろう。

相手車は衝突時、70km/hの速度だったとタイヤ痕などから計測されている。制限時速60km/hの道路で速度違反としては咎め立てするほどのものではないと担当検事は曰われたが、右折車の直進横断をしつつある車の存在に気がついていながら、速度も落とさず走行しようとするのは危険があまりあるし、自ら事故を呼び込むような行為に等しいというものだろう。

この記録画像から、やはり、どうしても推測されるのは、相手方Tはその走行斜線上に右折行為にあるRYOUKOの乗った車が停止するその時点まで、まったく視認していなかったのではないかということであり、その視認の遅れは直前の脇見運転の疑いをいよいよ大きくさせるものなのだ。

偶然にしても出来過ぎているようだが、昨日の同じ時刻頃、M氏は3度目の呼出しとかで検察庁に出向いていたらしく、私は帰りの車の中で彼からのMailを受け取った。

その報告によれば、検事はこの記録画像を見ていること、さらに本日でもって取り調べを終結し、略式起訴で刑の確定をする意図であったが、Mは弁護士と相談のうえ後日返答したいと申し出た、ということであった。

敢えて裁判へと持ち込むことが、M氏にとって有利にはたらくか、雉も鳴かずば撃たれまいにと、却って刑を重くすることになるか、その判断は微妙で難しいところだが、事故原因の実相に些かなりとも迫るには懼れず火中の栗を拾わざるを得なくなるのではないか。遺族の一人である私との接点を強めれば強めるほど、彼と彼の家族を窮地に陥れる結果を招くことにもなりかねないのだが‥。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「花見の巻」−31

   月夜々々に明渡る月  

  花薄あまりまねけばうら枯て  翁

次男曰く、名残の裏入である。
秋三句目で、夜明と覚しき末枯れた野の嘱目を寄せただけのように見えるが、そうではないらしい。花薄は穂に出たススキ、尾花の別名だ。前-端句-の作りを見咎めて、季語取出しにも一工夫があれば、作意にも観相がある。

「あまりまねけばうら枯て」は手詰りとなった前句を衝いた云回しで、ことの起りは珍碩にあるから、窘められているのは珍碩だとも云える。-「招く」は踊の付合-。
ともあれ、月の座も招き過ぎれば末枯れるしかあるまい、と冷かしている。尾花に托した、裏起しの場でのこの捌きはうまい。

中村俊定は「あまりまねけばの詞が月夜々々にに対応してひびいており、この擬人化された表現がこの句の作であるが、同時に景の句の中に人情をこめたおもしろさが出ている」、と。

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