医者のくすりは飲ぬ分別

Dancecafe081226117

−世間虚仮− 生命の春なれど‥

連日夜なべで追われた仕事もやっと一息。
昨日今日と連日20℃を越す陽気、各地で桜の開花宣言が相次ぎ、桜前線は一気に加速した模様だ。

そういえば日曜日の新聞だったか、一面トップに「桜前線100年後暴走」などと穏やかならぬ見出しで、思わず眼を奪われてしまったが、記事内容は、九大の気象学教授が九州の鹿児島から本州北端の青森まで温暖化影響下の各地について100年後の開花予測をつぶさにモデル化したもので、近く開催される日本農業気象学会で発表されるという論文を下敷きにしたもの。この説によれば、東北の、それも山里ほど開花時期が早まり、現在に比べて4週間近くも早くなるそうな。

そのバカ陽気とともに大陸飛来の黄砂が列島を覆って空から降りかかっては、折角咲かせた花の色も幾許か色褪せようし、ただでさえ短い花の命がさらに縮まろうというもの。花粉症に悩む多くの人々にとって苦しみは倍加しようし、陽春に誘われそぞろ野や山へなど以ての外、昔懐かし夢のまた夢だろう。

そういえば軽いとはいえアレルギー性小児喘息を患う幼な児のKAORUKOも、この2.3日はいつもより痒がっているようだしなんとなく不調の兆しがみえる。
思えば、西欧近代の、文明の行きつく果て、21世紀に生きるなどということは想像の埒外にあった我が身だけれど、いつのまにかそれも幾年ぞ‥。
そうだ、KAORUKO自身、01年の生まれ、彼女こそ苛酷な新世紀を生きる人であった。暴走の果ての新世紀を否応もなく生きねばならぬ人であった。

母親がB勤とやらで未だ帰らぬ今宵、少しだけ勉強を見てやり、夕食を済ませてからは「スピード」なるトランプ遊びの相手をしてやり、明日は学校の卒業式とやらで、その連想からだろうか、「賞状ごっこ」をしようなどと言い出したものだから、キーボードを叩いてちょっぴり本格的なのを作ってやった。

「賞 状  KAORUKO殿
  あなたは、四方館のダンスカフェで
  とてもよい演技をされ
  りっぱな成果をあげられましたので
  ここに感謝の言葉とともに
  これを賞し、記念とし本状を授与します。
   平成21年3月18日  四方館亭主 林田鉄」

声を出して読み上げたうえで、式次第よろしく手渡してやったら、なにやら感きわまったか、彼女の眼はウルウルときているようだった。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「花見の巻」−34

  一貫の銭むつかしと返しけり  

   医者のくすりは飲ぬ分別  翁

次男曰く、気味で付けた会釈-あしらい-である。必ずしも同一人と読む必要はないが、前と合せて「唯四方なる草庵」の主を自ずと指す作りになっている。珍碩を世に出すための興行なら猶更である。

「分別の門内に入る事をゆるさず」とうそぶく人間にも「医者のくすりは飲ぬ」という分別があるではないか、とからかっている。旅人芭蕉の自画像でもあるだろう。

「雁がねの巻」両吟-貞享5年9月興行-に、「なに事も長安は是名利の地−芭蕉、 医のおほきこそ目ぐるほしけれ−越人」という付合があった。そういう時代風潮に対する諷刺とも取れる。因みに、珍碩も医を見過ぎとしたと伝える。それなら、医者の不養生とも、珍碩輩の処方した薬はうかつに飲めぬとも、「分別」の意味が拡がる。

蕉門に所謂医家は多い。其角・去来は名家の出だが荷兮・尚白・風国・凡兆・木節・朱拙なども町医と伝える、と。

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